超伝導バルク磁石の着磁に関する研究

超伝導バルク磁石写真 超伝導は極低温に冷却すると抵抗が零になる物質です。特に酸化物超伝導体は約90K(ケルビン=約-180℃)で,超伝導状態になり,液体窒素や小型冷凍機で冷却することができます。超伝導体の応用の一つに,擬似永久磁石としての応用があります。通常の永久磁石は0.1T(テスラ=1000ガウス)程度ですが,超伝導磁石は3T以上の磁石になることができます。超伝導体が磁石になるには,冷却と磁化(外部から強い磁場を印加)という作業が必要です。本研究は,強い磁石を作るための磁化の方法を研究します。また,超伝導磁石の応用についても検討します。
図は約3テスラに着磁したバルク磁石の磁極間に直径2mmの鉄球をくっつけた写真です。磁極を近づけた状態からその間隔を大きくしても,鉄球は強い磁力のために落ちることはありません。バルク磁石の強さがよくわかります。(図をクリックすると別ウィンドウでビデオが再生されます。)

磁気分離に関する研究

磁気分離写真 「磁気分離」は磁性物質を磁石の力で分離する技術です。スチール缶やアルミ缶の分離のほか,湖のアオコ除去や環境ホルモン除去,タンカーのバラスト水の浄化などへの応用が検討されています。
私たちはバルク磁石を使った磁気分離装置を提案し,基礎実験として赤錆の混じった水から赤錆を除去する実験を行っています。赤錆は磁性が小さいため永久磁石にはほとんどくっつきませんが,バルク磁石の強い磁石を使えば赤錆の分離率を向上させることができます(図をクリックすると,別ウィンドウで磁気分離実験のビデオが再生されます)。現在は磁気分離で除染(特に放射性物質の減容化)に関する研究がすすめられています。

超伝導磁気浮上に関する研究

超伝導ジェットコースター写真 高温酸化物超伝導体は第2種超伝導体に分類され,マイスナー効果(完全反磁性)のほかにピン止め効果を持っています。これは超伝導体内部に存在する常伝導部分に磁束が捕捉される特性で,これにより無制御で安定な磁気浮上が実現できます。このピン止め効果を利用して,卒業研究で超伝導ジェットコースターの製作を行っています。ネオジム磁石でコースを作り,超伝導体を液体窒素で冷却して磁石上を走行させます。コースと非接触で走行できるため,ダストフリーな走行・搬送システムが実現できます。将来は半導体工場や薬品,食品工場等への応用が期待されています。

電力系統の安定化に関する研究

電力系統安定化制御の説明図 電気は私たちの生活の重要なライフラインになっています。その電気を安全に効率よく送電する方法を研究します。近年,電力需要が大きく伸びる中,既存の送電設備で供給できる電力は限界に近づいています。しかし,経済や環境の問題から送電線の新設は難しくなってきています。そこで,既存の送電設備でより多くの電力を送電する方法を考えなければなりません。送電線における送電容量は送電限界の半分近くになっています。これは,故障などが起こった場合に発電機が加速して大きな電力が送電線に流れたときのマージンをとっているためです。そこで,故障が発生した場合にも発電機を制御することで過剰電力を最小限にとどめることができれば,マージンを少なくしてその分より多くの電力を送ることができます。本研究は送電電力の増大および電力系統の安定化を目指して,発電機または電力機器を現代制御理論に基づいた方法で制御する方法を研究しています。