水素吸蔵合金とは
水素を吸蔵、放出できるようにした合金
水素原子は原子中最も小さい原子である。そのため、水素はほとんどの元素と反応して、水素化物あるいは水素化合物をつくる。特に、金属は水素ガスと反応し金属水素化物を生成することは古くから知られていた。中でも希土類金属(マグネシウム、パラジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム)は、たやすく水素と反応し、金属結晶格子間に多量の水素を吸蔵して金属化合物を生成する。一方、鉄やニッケルなどは、水素と反応しにくく、高温高圧にしないと水素と反応しない。 金属水素化合物を水素貯蔵として用いるには、水素放出能力が必要となるが、希土類金属は、水素吸蔵能力は高いが、放出能力は劣っている。そこで、反応しにくい鉄やニッケルと希土類金属を混合し合金を作成したところ、水素吸蔵能力と放出能力を併せ持つ金属となることがわかり、この合金を水素吸蔵合金と呼んでいる。(参考文献:「新版 水素吸蔵合金―その物性と応用―」, 大角泰章, アグネ技術センター, 1993年)
水素吸蔵合金の特徴
・加圧すると水素を吸蔵、減圧すると水素を放出する。
・反応面積を広げるため基本的に粉体で扱われる。
・水素吸蔵放出の繰返しによって粒子が崩壊していく。
・水素吸蔵時に膨張し、水素放出時に収縮する。
・水素吸蔵時に発熱し、水素放出時に吸熱する。
水素吸蔵合金の利点
・比較的低温度(100℃以下)でも水素吸蔵放出が可能
・比較的低圧力(10気圧以下)でも水素吸蔵放出が可能
・爆発危険性が少ない
・省スペース:大気圧気体の約1/1000体積
水素吸蔵合金の欠点
・重量が重い
水素貯蔵の比較
LaNi5
水素吸蔵合金の水素吸蔵放出による膨張収縮
水素吸蔵合金による水素タンク開発