機械や構造物の破壊事故の原因の80%以上が金属材料の疲労破壊により引き起こされていることが知られています。この破壊の原因を明らかにし、疲労に強い、事故防止のための材料開発を行っています。
金属材料の強度、硬さは結晶粒が微細化するほど増加することが知られています(ホール・ペッチの関係)。そこで、究極的に結晶粒の大きさをナノメートルから数十ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル、インフルエンザのような細菌類と同程度)にまで小さくすることにより、極めて高い強度、硬さの材料を作るための材料プロセスを電析(めっき)により検討しています。さらに、得られたナノ結晶金属材料の、硬さ、引張強さおよび疲労強度を評価しています。右の下図は、ナノ結晶ニッケル-リン合金の高サイクル疲労破壊試験の結果です。通常の結晶粒径(1mm以上))をもつ材料に比べ、ナノ結晶材料では疲労強さが約2倍にまで増加することることがわかりました。また、これらの材料の破壊機構についても検討を勧めてきました。
機械・構造物の安全性・信頼性の低下を引き起こす粒界腐食や粒界への不純物原子の偏析によって生じる粒界脆化は、粒界エネルギーの高いランダム粒界に沿って進展する浸透(パーコレーション)現象と考えることができます。そこで、左図(上)のようにパーコレーション経路となる特定の粒界の多結晶材料における空間幾何学的分布状態を複雑図形の評価に用いられるフラクタル解析により評価し、さらにそれを制御することによって、従来材料に比べて優れた性能・機能を有する金属材料を開発することを目指して研究を進めています。
ヒトの骨や貝殻、さらにはクモの糸など、自然界には優れた強度をもつ材料が多々あります。これらを構成する物質自体は必ずしも高い強度をもっているわけではありません。これらが「材料システム」として高い強度を示す原因を探り、機械材料の設計・開発に役立てることを目的として研究を進めています。現在、水の凝固過程を利用して貝殻のような層状構造をもったバイオセラミックスの開発に成功し、その特性評価を進めています。右図は、髪の毛よりも細いセラミックスの構造体の電子顕微鏡です。これまでになかった新しい多層複合材料が作れる可能性があります!
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