「区画整理の研究です」と答えるしかない.
昭和40年に組合施行の1地権者として初めて『区画整理』という言葉を知った.小学6年生だった.ここら辺は,ホームページのコミックのネタである.高校生の頃,組合の理事で町一番のインテリ(東大卒)というおじさんと会った.糞生意気な高校生だったと思うが,あとから,内村鑑三著「デンマルク国の話」(岩波文庫)を貰った.読んでみて大して面白いとは思わなかったが,自分が還暦を過ぎて,その理事さんの気持ちが理解できるような気がした.後世への最大遺産として街を残すという気持ちだったんだろう.
大学で都市計画系の研究室に進んだが,区画整理は実務だからよく教えてもらっていない.ただ,「石川栄耀という偉い人がいた」という恩師の話だけは覚えている.まさか自分が施行者の一員になり,地権者説明に明け暮れるとは,全く考えていなかった.
新入社員時代の三つの謎が研究の動機である.昭和50年代のことである.
当時,区画整理のいい参考書は少なかった,そもそも専門用語の解説もなかった.ジャーゴンの塊のような換地屋の世界である.カードを作り,結局,故清水浩さんたちと「土地区画整理用語集」を出版した.今,絶版でよかったと思う.勉強不足で物を書くなんて思えば,冷や汗ものである.
下出義明著「換地処分の研究」には,「区画整理とは土地の区画形質の変更をして換地処分をすること」と定義されている.法律を学んでないから,全く意味不明であった.
当時の土地評価は『一物四価』と呼ばれるくらい難しかった.取引価格,固定資産税評価額,相続税評価額が路線価とは別にあったようなものである.「正常価格とは完全競争市場がある場合,そこで決定される価格である」と経済学の本にはあるが,経済学を勉強していないので,全く意味不明であった.
40年近く区画整理に関係してきて少しわかってきたような気がする.謎の答えは,
1)農民に簡単に騙さるほど武士や明治政府は愚かではなかった.地租改正時に農地は1割まで測量誤差を認めてられていた.
2)行政処分行為として区画整理を施行するからである.私法ルールで権利の交換をする開発手法には「照応の原則」はない.
3)開発行為を許可し,更に線引きをすれば,従前の「都市計画による地価増加」がダブルカウントされるからである.
と,結論は当然といえるような内容ばかりである.ドイツの区画整理と比較分析をしたり, 諸外国の権利変換型の事業と比較分析をしたり,地租改正の歴史を調べたりと気が付けば
還暦を過ぎてしまった.興味を持ったことを勉強しているのだから,幸せなのであろう.
地籍という言葉をご存知ですか?地積は土地の面積ですが、地籍は土地の戸籍です。
地積も地籍の一部です。地籍とは、土地の様々な属性をファイルしたものです。地形測量に比べて、地籍測量は地味な分野です。また、所有者の個人情報が関係するから取り扱いも慎重になります。
日本の地籍制度の特徴に「縄伸び」があります。遡れば、悪代官とお百姓の世界まで行きます。それをいろいろ調べてみました。「土地に関する駄文」のコーナーも参考に見てください。
地籍測量史の研究(縄伸びの話).pdf
近代地籍制度の成立過程と登記面積誤差に関する研究
土地区画整理事業の換地設計の理論的研究をしてきました。それをまとめたものが次の論考です。まちづくり区画整理協会の2004年11月の特集として掲載しました。この号は、土地区画整理法制定50周年記念の特集号で、区画整理土地評価、区画整理設計、清算業務など多方面の専門家が論考を寄稿しています。大学や大学院で区画整理の研究をしてみたい学生さんには、是非、この号の一読をお勧めします。
換地設計概論.pdf