| 第十一章 木造及土蔵造 |
第六十六條 |
木造屋ノ敷地ハ周囲ノ地盤ヨリ髙キコト三寸以上タルヘシ
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木造建物の敷地は、周囲の地盤より三寸(約9cm)以上高くすること。
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第六十七條 |
木造屋ノ床ハ六分以上ノ板ヲ用井間隙ナキ様搆造スヘシ
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木造建物の床は六分(約5mm)以上の厚さの板を用いて、隙間が無いように造ること。
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第六十八條 |
木造屋ノ床下ハ土臺下端ヨリ髙サ一尺五寸以上トシ天井ノ髙サハ敷居上端ヨリ七尺以上トスヘシ
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木造建物の床下の高さを土台下端から一尺五寸(約45cm)以上とし、
天井の高さを敷居上端から七尺(約2.1m)とすること。
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但二階三階モ亦同シ
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また、二階や三階も同じとする。
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第六十九條 |
木造屋床下ニ穴蔵ヲ築造セントスルトキハ内部ハ総テ煉瓦又ハ石ヲ用ユヘシ
若シ他材ヲ用ヒ又ハ其搆造屋外ニ及フトキハ特別ノ認可ヲ受クヘシ
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木造建物の床下に地下倉庫を築造するとき、内部には全て煉瓦または石を用いること。
もし、他の材料を用いる、または倉庫が屋外におよぶときは特別に認可を受けること。
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第七十條 |
木造屋ノ炊所ニハ烟筒又ハ煙出窓ヲ設クヘシ
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木造建物の台所には煙筒または排煙窓を設けること。
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第七十一條 |
木造屋ニ金属烟筒ヲ設置スル場合ニ於テハ燃質物ト密接スル其周囲ニ厚サ三寸以上ノ金属ニアラサル不燃質物ヲ以テ火虞ヲ防クヘシ
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木造建物に金属煙筒を設置する場合には、可燃材と密接する箇所に厚さ三寸(約9cm)以上で非金属の不燃材を用いて火災を防ぐこと。
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第七十二條 |
水流シハ不滲透質ノ材料又ハ厚板ヲ以テ間隙ナキ様搆造スヘシ
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流し台は浸透しない材料または厚板を用いて隙間のないように造ること。
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第七十三條 |
土蔵造ノ家屋ハ土ノ厚サ柱外五寸以上タルヘシ
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土蔵造の家屋は、土の厚さを柱の外から五寸(約15cm)以上とすること。
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| 第十二章 煉瓦及石造屋 |
第七十四條 |
煉瓦又ハ石造屋ヲ建築セントスルトキハ其地所ニ面積五分ノ一以上ノ空地ヲ存スヘシ
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レンガまたは石造の建物を建築するときは、その敷地の面積の1/5以上の空地を設けること。
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第七十五條 |
煉瓦又ハ石造屋ヲ建設セントスルトキハ最狭處十二尺ヲ下ラサル中庭ヲ置クコトヲ要ス
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レンガまたは石造の建物を建設するときは、最も狭い箇所で十二尺(約3.6m)以上ある庭を設けることを要する。
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但隣家ト共同ノ中庭ヲ設ケントスルモノハ建築調査局之ヲ認可スルコトアルヘシ
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ただし、隣家と共有する庭を設ける場合は建築調査局が認可する。
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第七十六條 |
煉瓦又ハ石造屋ノ壁ニシテ窓アルモノハ隣接スル住地疆界ヲ距ルコト十二尺以上ナルコトヲ要ス
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レンガまたは石造の建物の壁に窓がある場合は、隣接する宅地境界から十二尺(約3.6m)以上の距離をとること。
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第七十七條 |
煉瓦又ハ石造屋ノ裏屋ノ髙サハ其面スル中庭ノ幅ヲ踰ユルコト十二尺ヨリ大ナルコトヲ許サス
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レンガまたは石造の建物の裏屋の高さは、面する庭の幅から十二尺(約3.6m)を超える値としてはならない。
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第七十八條 |
煉瓦及石造ノ建物ヲ路次上ニ架設スルトキハ地上ヨリ髙サ十尺以上トスヘシ
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レンガおよび石造の建物を路地上に架け渡すときは高さを地上から十尺(約3m)以上とすること。
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第七十九條 |
煉瓦及石造屋ノ基礎ハ根切ノ深サ三尺以上タルヘシ
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レンガおよび石造の建物の基礎は、深さを三尺(約90cm)以上の根切りを行って施工すること。
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第八十條 |
煉瓦及石造屋ノ基礎ニ用ユル石、煉化等ハ極メテ堅實ナルモノヲ撰ヒ「セメント」入「トロ」ニテ積立ツヘシ
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レンガおよび石造の建物の基礎に用いる石、レンガ等は極めて堅固なものを選び、セメントトロ(水の多いモルタル)を用いて積み立てること。
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第八十一條 |
煉瓦及石造屋ニハ適当ノ根積ヲ設クヘシ
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レンガおよび石造の建物には適切な根積みを設けること。
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第八十二條 |
煉瓦及石造屋ノ髙サ二十四尺以下ノモノハ一階外壁ノ厚サヲ煉瓦石二枚一尺五寸三分以上トシ
二階ハ下壁ノ厚サニ煉瓦半枚三寸六分ヲ減スルコトヲ得ヘシ
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レンガおよび石造で高さが二十四尺(約7.3m)以下の建物は、一階の外壁の厚さをレンガ二枚一尺五寸三分(約46.4cm)以上とし,
二階は下階の壁の厚さからレンガ半枚三寸六分(約10.9cm)を減じることができる。
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第八十三條 |
家屋ノ裏積ヲ煉瓦ニシ表面ヲ石ニテ被フトキハ石ト煉瓦トニ扣ヘ取リヲ設ケ接合スヘシ
若シ厚サ五寸以下ノ石材ヲ用ユルトキハ必ス繋キ鐵物ヲ用井テ煉瓦ト石材トヲ締合スヘシ
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家屋の裏積みをレンガで行い表面を石で覆うときは、石とレンガとに控え取りを設けて接合すること。
もし、厚さが五寸(約15cm)以下の石材を用いるときは必ず繋ぎ金物を用いてレンガと石材とを結合すること。
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但厚サ五寸以下ノ石材ヲ以テ外部ヲ被フトキハ之ヲ外壁ノ厚サニ算入セス
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ただし、厚さが五寸(約15cm)以下の石材を用いて外部を覆うときは、これを外壁の厚さには算入しない。
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第八十四條 |
疂石ハ毎層九尺以内ニ扣取石ヲ交置シ裏積ト締合スヘシ
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積み石は各層の九尺(約2.7m)以内に控取石を配置して裏積みと結合すること。
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第八十五條 |
煉瓦ヲ疂ムトキハ芋継ナカラシムヘシ
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レンガを積むときは芋継ぎ(二段以上で縦目地が続く積み方)にならないようにすること。
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第八十六條 |
風雨ニ接スル煉瓦壁頭ニハ適当ノ覆蓋ヲナスヘシ
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風雨に接するレンガ壁の頂部には適切な覆蓋を設けること。
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第八十七條 |
明キ二尺迠ノ迫持ハ厚サヲ横煉瓦二枚以上トシ其明キノ加ハルニ應シテ適當ノ枚數ヲ増スヘシ
石材迫持ノ厚サモ亦之ニ準ス
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空きが二尺(約60cm)までの迫持(アーチ)では厚さを横レンガ二枚以上とし、
空きが増えるのに応じて適切な枚数を増やすこと。
石材による迫持の厚さもこれに準ずる。
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但迫持ハ「セメント」「トロ」ヲ用フヘシ
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ただし、迫持にはセメント・トロ(水を増量した液状のもの)を用いること。
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第八十八條 |
出入口及窓ノ上ニハ迫持又ハ石材若クハ鐵梁ヲ架シ頭壁ノ貫量ヲ支持セシムヘシ
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出入口および窓の上には迫持(アーチ)または石材もしくは鉄製の梁をかけ、
上壁の重量を支持すること。
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第八十九條 |
石造ノ軒蛇腹ハ其物量ノ三分ノ二ハ下壁ニテ支持セシメ危険ナカラシムヘシ
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石造りの軒蛇腹(軒部分の帯状装飾)の重量の2/3は下壁で支持させて危険のないようにすること。
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第九十條 |
二階、三階床下ノ音響止ニハ濕潤、若クハ汚穢ノ物ヲ鋪クヘカラス
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二階、三階の床下の防音には,湿ったもしくはけがれたものを用いないこと。
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第九十一條 |
煖爐ノ前面ニハ必ス石、煉瓦若クハ陶磁器ノ類ヲ以テ灰留メヲ設クヘシ
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暖炉の前面には必ず石、レンガもしくは陶磁器の類を用いて灰留めを設けること。
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第九十二條 |
煉瓦造ノ壁及柱ノ上ニ鐵柱、石柱若クハ鐵梁ヲ用フルトキハ
其支持スル重量ニ堪フル石材又ハ鐵材ノ基底ヲ設クヘシ
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レンガ造の壁および柱の上に鉄柱、石柱もしくは鉄梁を用いる場合には、
その支持する重量に耐えられる石材または鉄材の基礎を設けること。
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第九十三條 |
煉瓦及石造建物ヨリシテ六尺以上ノ距離ヲ存スルニアラサレハ堀井其他ノ坑穴ヲ掘穿スルコトヲ許サス
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レンガおよび石造建物から六尺(約1.8m)以上の距離がない場所では井戸その他の穴を掘ってはならない。
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但以距離外ニ於テ之ヲ掘穿スルトキモ他ノ石壁ニ損害ヲ與ヘサル方法テ設クヘシ
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ただし、距離がある場所で掘穿するときも、他の石壁に損害を与えない方法で設けること。
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第九十四條 |
石造ノ倉庫、髙サ三十尺以内ナルモノハ一階壁ノ厚サヲ一尺五寸以上トシ
二階壁ノ厚サハ下壁ノ厚サヨリ三寸ヲ減スルコトヲ得
積手ニハ充分ニ「トロ」ヲ用井空積ナカラシムヘシ
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石造の倉庫で高さ三十尺(約9m)以内のものは、一階壁の厚さを一尺五寸(約45cm)以上とし、
二階壁の厚さは下階壁の厚さから三寸(約9cm)を減らすことができる。
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但髙サ三十尺以上ハ十尺毎ニ三寸以上ノ厚サヲ加フヘシ
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ただし、高さが三十尺(約9m)以上のものは、十尺(約3m)ごとに三寸(約9cm)以上の厚さを加えること。
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第九十五條 |
河又ハ崖地ニ臨ミ石造、煉瓦造若クハ土蔵造ノ建築ヲナスニ當リテハ地質ノ堅軟ニ拘ハラス崩壊ヲ防クヘキ方法ヲ施スヘシ
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川または崖地に臨んで石造、レンガ造もしくは土蔵造を建築するに当たっては、
地質の強弱にかかわらず崩壊を防ぐ方法を施すこと。
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第九十六條 |
煉瓦及石造屋ノ住室ハ百五十立方尺毎ニ一平方尺以上ノ外気ニ通スル窓ヲ設クヘシ
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レンガおよび石造の建物の居室には百五十立方尺(約13平方m)毎に
一平方尺(約900平方cm)以上の外気に通じる窓を設けること。
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第九十七條 |
煉瓦及石造屋天井ノ髙サハ牀上ヨリ一階ハ十尺以上二階ハ九尺以上三階以上ハ八尺ヨリ下ラサルモノトス
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レンガおよび石造の天井の床上からの高さは、一階では十尺(約3m)以上、二階では九尺(約2.7m)以上、
三階以上では八尺(約2.4m)を下回らないこととする。
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第九十八條 |
煉瓦及石造屋ノ厠坑ハ之ヲ家屋外ニ置キ其周壁ヲ不滲透質ニシテ其容積ヲ充分ニシ其底面ヲ凹形ニスヘシ
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レンガおよび石造建物の厠坑は屋外に置き、その周壁を浸透しない材質とし、容積を充分とし、底面を凹形とすること。
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第九十九條 |
煉瓦及石造住屋ノ厠圊ニハ内径三寸以上ノ不滲透質ノ堕糞管ヲ設ケ其周囲ヲ検視スルニ差支ナキ装置ヲ為スヘシ
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レンガおよび石造建物のトイレには内径三寸(約9cm)以上の浸透しない材質の堕糞管を設け、
その周囲を検視するのに差支えないようにすること。
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第百條 |
煉瓦及石造屋ニ設ケタル廃物ヲ通スル管ニハ屋根ヨリノ髙キ臭気抜ヲ附スヘシ
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レンガおよび石造建物に設けた廃物を通す管には屋根より高い臭気抜きを付けること。
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| 第十三章 公舘ノ特別注意 |
第百一條 |
公舘ハ寺院、會状、劇場、學校タルヲ問ハス其出入口ニ外開キノ扉、自在戸若クハ引戸ヲ設クヘシ
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公共施設には、寺院、会場、劇場、学校を問わず出入口に外開きの扉、自在戸もしくは引戸を設けること。
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但開舘中ハ内外開閉自在戸ノ外ハ開放シ置クモノトス
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ただし、開館中は内外の開閉自在戸以外は開放しておくものとする。
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第百二條 |
公舘ノ戸口、階段、据付椅子、通行道ハ非常ノ際ニ戸外ニ出テ易キ様ニ配置スヘシ
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公共施設の戸口、階段、据付椅子、通路は、非常時に屋外に出やすいように配置すること。
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第百三條 |
公舘ハ道路若クハ廣場ニ面シテ明キ三尺以上ノ非常戸一箇以上ヲ設クヘシ
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公共施設は道路もしくは広場に面して三尺(約90cm)以上の非常扉を一ヶ所以上設けること。
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第百四條 |
公舘ニハ換氣ノ方法完全ナルコトヲ要ス
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公共施設では換気の方法が完全でなければならない。
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第百五條 |
病院、貸席、料理店、旅人宿等ニシテ衆人ヲ宿舎シ又ハ集會スヘキモノニハ其階上ヨリ出入口ニ達スル
階段二ヶ所以上ヲ設ケ其幅四尺以上タルヘシ
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病院、貸席、料理店、旅館等の大勢の人が宿泊または集会する建物は、
上階から出入口に通じる階段を二ヶ所以上設け、その幅は四尺(約1.2m)以上とすること。
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第百六條 |
劇場及寄席ノ客席ハ一人ニ付一尺五寸四方ノ割合ヲ下ラサルコトヲ要ス
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劇場および寄席の客席は一人当たりのスペースが一尺五寸平方(約45cm×45cm)を下回ってはならない。
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第百七條 |
劇場ハ毎層屋直チニ戸外ニ通スル非常口ヲ設ケ其非常口ニ通スル階段ニハ不燃質ノ材料ヲ以テ造ルコトヲ要ス
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劇場では各階に直ちに屋外に通じる非常口を設け、その非常口に通じる階段には不燃材を用いなくてはならない。
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第百八條 |
劇場ノ表口ハ六間以上ノ道路若クハ廣場ニ面スヘシ
其之ニ面セサル部分ハ周囲ニ幅三間以上ノ空地アルコトヲ要ス
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劇場の表口は六間(約10.8m)以上の道路もしくは広場に面していること。
これに面していない部分は周囲に幅三間(約5.4m)以上の空地がなければならない。
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第百九條 |
劇場ノ階段ハ幅四尺以上蹴上六寸以下踏面八寸以上ナルコト要ス
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劇場の階段は幅が四尺(約1.2m)以上、蹴上が六寸(約18cm)以下、踏面が八寸(約24cm)以上としなくてはならない。
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但螺旋形ヲ許サス
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ただし、螺旋形は許可しない。
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第百十條 |
寄席ノ階段ノ中一ヶ所ハ幅四尺以上タルベシ
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寄席の階段のうち、一ヶ所は幅を四尺(約1.2m)以上とすること。
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| 第十四章 工業用ノ建物 |
第百十一條 |
工業用ノ建物ヲ設ケントスルトキハ建物ノ配置隣地トノ境界、下水ノ位置其他明細ナル圖面及煙筒ノ寸法、
重量ノ調書ヲ添ヘテ建築調査局ニ届出テ認可ヲ受クヘシ
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工業用建物を建築するときは、建物の配置、隣地との境界、下水の位置その他詳細な図面
および煙突の寸法、重量についての調書を添えて建築調査局に届け出て認可を受けること。
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第百十二條 |
蒸汽力、水力、電氣力等ヲ以テ機械ヲ使用スル工場及操業上静寂ナラサル工場ハ
道路及廣場ニ面セサル周囲ニ十八尺以上ノ空地ヲ存スヘシ
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蒸気力、水力、電気力等で機械を使用する工場および操業上騒音を発する工場は、
道路および広場に面しない周囲に十八尺(約5.4m)以上の空地があること。
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第百十三條 |
前條ニ依リ難キ場合ニハ建築調査局ヘ願出ツルニ當リテ
周囲九十尺以内ノ地主及建物主ノ承諾ヲ得タル證明書ヲ添フヘシ
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前条に従うことができない場合には、建築調査局に願出るにあたって、
周囲九十尺(約27m)以内の地主および建物主の承諾を得た証明書を添付すること。
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第百十四條 |
工業用ノ建物ハ煉瓦又ハ石造ナルヘシ
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工業用建物は煉瓦または石造であること。
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第百十五條 |
工業用ノ建物ト他ノ建物ト相隣接シタル地所疆界ニハ必ス十二尺以上ノ煉瓦又ハ石造放火壁ヲ設クヘシ
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工業用建物と他の建物と隣接した土地境界には必ず十二尺(約3.6m)以上のレンガまたは石造の防火壁を設けること。
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第百十六條 |
汽罐用及其他ノ工業用ニ供スル烟突ハ髙サ六十尺以上ナルヘシ
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汽缶(ボイラー)用およびその他の工業用に用いる煙突は髙さを六十尺(約18m)以上とすること。
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第百十七條 |
工業用ノ建物ニ用フル梁材ハ其支ヲ五寸以上トナシ或ハ繫鐵物ノ類ヲ以テ壁ト梁トヲ堅牢ニ結着シ
根太貫九尺毎ニ繫鐵物又ハ蟻掛等ヲ用フヘシ
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工業用建物に用いる梁材は支えを五寸(約15cm)以上とする、あるいは継鉄類を用いて壁と梁とを頑丈に結合し、
根太貫の九尺(約2.7m)ごとに継鉄または蟻掛等を用いること。
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第百十八條 |
工業用ノ建物ノ周壁ノ厚サハ尋常建物ノ壁ノ厚サニ準シ
其器械据付ノ為メ重量ヲ支持セル周壁ハ壓力ノ軽重ニ従ヒ壁ノ厚サヲ増スヘシ
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工業用建物の周壁の厚さは通常の建物の壁厚に準じ、
機械の据え付けによる重量を支持する壁は力の軽重に従って壁厚を増やすこと。
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第百十九條 |
工業用ノ建物ノ床ニ木材ヲ用ユルトキハ砂、煉砂利等ヲ以テ床下ヲ填充スヘシ
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工業用建物の床に木材を用いるときは砂、煉砂利等を床下に充填すること。
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第百二十條 |
二屋層以上ノ工業用ノ建物ハ毎屋層直チニ戸外ニ通スル非常口ヲ設ケ之ニ通スル階梯ハ不燃質ヲ以テ造ルヘシ
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二階以上の工業用建物は各階に直接戸外に通じる非常口を設け、これに通じる階段は不燃材で造ること。
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第百二十一條 |
廣大ナル工業用ノ建物ハ職工ノ多寡ニ依リテ前條ノ如キ階梯ヲ適宜ノ数ニ設クヘシ
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広大な工業用建物には職工の人数によって適切な数の前条の階段を設けること。
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第百二十二條 |
工業用ノ建物ノ出入口、非常口及階梯等ハ非常ノ際混雑セサル様ニ搆造スヘシ
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工業用建物の出入口、非常口および階段等は、非常時に混雑しないように形作ること。
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第百二十三條 |
導達軸ヲ設置シ機械力ヲ使用スル工業用ノ建物ハ床ヨリ天梁マテ十二尺以上ナルヘシ
若シ下ヨリ第二第三屋層等ニ導達軸ヲ設置スル場合ニ於テモ亦然リ
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導達軸(エンジン?)を設置して機械力を使用する工業用建物は、床から天梁まで十二尺(約3.6m)以上とすること。
もし二階三階等に導達軸を設置する場合でも同じである。
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第百二十四條 |
工業用ノ建物ニハ完全ナル換氣法ヲ施行スヘシ
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工業用建物には完全な換気法を施すこと
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第百二十五條 |
汽罐室ハ衆人勞動セル工作所ヨリ隔離シタル所ニ設クヘシ
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ボイラー室は大勢が労働する場所から隔離すること
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第百二十六條 |
静穏ニシテ公衆ノ妨害トナラサル工業用ノ建物及建築調査局ノ特別認可ヲ受ケタル工業用ノ建物ハ本則ニ準據セサルコトヲ得ヘシ
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静穏で公衆に害を与えない工業用建物および建築調査局から特別認可を受けた工業用建物は本則に準拠しなくてもよい。
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| 第十五章 湯屋搆造法 |
第百二十七條 |
湯屋の搆造法ハ石造又ハ煉瓦造ニシテ間口五間以上奥行八間以上ナルコトヲ要ス
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銭湯は石造またはレンガ造とし、間口五間(約9m)以上、奥行八間(約14.4m)以上でなければならない。
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第百二十八條 |
男女ノ浴場ハ浴槽、流シ場トモ各別ニ之ヲ設ケ互ニ見透スヘカラサル疆界ヲ設クヘシ
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浴場は浴槽、流し場ともに男女別に設け、お互いに見えないように境界を設けること。
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第百二十九條 |
烟突ハ竃前ニ接續セシメ其土臺ハ幅四尺奥行六尺以上ニシテ髙サ五尺ニテ厚サ七寸以上ノ石又ハ煉瓦ヲ以テ築造シ
屋根ヨリ六尺以上(石炭ヲ使用スルトキハ一丈以上)突出セシムヘシ
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煙突は竃の前に接続させ、その土台は幅四尺(約1.2m)奥行六尺(約1.8m)以上で高さ五尺(1.5m)とし、
厚さ七寸(約2.1cm)以上の石またはレンガを用いて造り、屋根より六尺(約1.8m)以上(石炭を使用する
ときは一丈(約3m)以上)突出させること。
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但烟突最上部ノ厚サハ三寸マテ減スルモ妨ケナシ
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ただし、煙突の最上部の厚さは三寸(約9cm)まで減じてもよい。
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第百三十條 |
竃前ニ近接シタル天井又ハ屋根裏ハ必ス不燃質ノ材料ヲ以テ之ヲ被フヘシ
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竃の前に近接する天井または屋根裏は必ず不燃材を用いて覆うこと。
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第百三十一條 |
火消所、灰置場ハ竃前ニ竪六尺幅及ヒ深サ三尺以上地盤ヲ穿チ石又ハ煉瓦ヲ以テ其周囲ヲ築造スヘシ
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火消所、灰置場は竃の前に縦六尺(約1.8m)幅および深さ三尺(約90cm)以上で地盤を掘り、
石またはレンガを用いて周囲を造ること。
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第百三十二條 |
焚物置場ハ石造又ハ煉瓦造ニシテ竃前ヨリ三間以上ノ距離ニ設ケ竃前ニ近キ所ニ小出シ場ヲ置クコトヲ得
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焚物置場は石造またはレンガ造とし、竃から三間(約5.4m)以上離れた場所に設け、
竃の近くに小出し場を置くことができる。
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但木造ナルトキハ不燃質ノ材料ヲ以テ之ヲ被フヘシ
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ただし、木造であるときは不燃材を用いてこれを覆うこと。
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