東京市建築條例(案)

明治二十七年十二月三日
第一章總則第十一章木造及土蔵造
第二章建築認可及檢査第十二章煉瓦及石造屋
第三章危険家屋第十三章公舘ノ特別注意
第四章工事監督者第十四章工業用ノ建物
第五章道路及廣場ノ関係第十五章湯屋搆造法
第六章特定線路及區域第十六章美術及歴史上保存スヘキ建物
第七章建築地所及家屋第十七章屠所及市場
第八章建物搆造法第十八章畜舎
第九章住室第十九章補則
第十章厠圊、坑穴第二十章罰則

原本には鉛筆で修正・加筆された箇所がありますが、ここでは印刷された文章のみを載せています。

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第一章 總則
第一條 本條例ハ建物ノ堅固市街ノ美觀及建物ニ関スル公衆ノ衛生等總テ建築ニ係ル事ヲ制定スルモノトス
本条例は建物の強さや市街の美観、および公衆の衛生等、すべて建築にかかわることを制定するものとする。
第二條 本條例ハ東京市内ニ施行ス
本条例は東京市内(現在の東京23区)に施行する。
第三條 本條例ノ規定ニ依リ難キ建築ヲナサントスルトキハ特ニ建築調査局ノ認可ヲ受クヘシ
本条例の規定に準拠しがたい建物を建築するときは、特別に建築調査局の認可を受けること。
第四條 建築ヲナサントスルトキハ建築調査局ニ於テ定ムル所ノ家並線及水準ニ従フヘシ
建築しようとするときは建築調査局が定める家並線および水準に従うこと。
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第二章 建築認可及檢査
第五條 建築ヲナサントスルモノハ其新築、増築若クハ改築タルヲ問ハス地所并建物ノ百分一ニ當レル圖面及仕様書 各二通ヲ以テ建築調査局ニ届出テ認可ヲ受クヘシ
建築を行うものは、新築、増築もしくは改築を問わず、敷地ならびに建物の百分の一の図面および仕様書各二通を 建築調査局に届け出て認可を受けること。
第六條 前項ノ届書ニハ其工事ヲ担當スルモノノ連印ヲ要ス
前条の提出書類にはその工事を担当するものの連印を要する。
第七條 建築調査局ハ圖面及仕様書ヲ審査シ必要ノ場合ニ於テハ更ニ詳細圖面ヲ徴シ適當ト認メタルトキ認可證ヲ付與ス 認可證ハ之ヲ付與セシ日ヨリ一ヶ年内工事ニ着手セサルトキハ其効ヲ失フモノトス
建築調査局は図面および仕様書を審査し、必要である場合には更に詳細図面を要求して適切であると認めたときに認可証を付与する。 認可証は付与された日から一年内に工事を着工しないとその効力を失うものとする。
第八條 建築調査局ハ建築圖面及仕様書ヲ審査シ本條例ニ違ヒ又ハ市街ノ美観ヲ損スルモノト認ムルトキハ之ヲ許可セサルコトアルヘシ
建築調査局は建築図面および仕様書を審査し、本条例に違反または市街の美観を損ねると認めたときは許可してはならない。
第九條 認可ヲ経タル建築仕様ヲ改メントスルトキハ更ニ其部分ノ圖面及仕様書ヲ建築調査局ニ差出シ認可ヲ受クヘシ
認可を受けた建築仕様を改めるときは、更にその部分の図面および仕様書を建築調査局に提出して認可を受けること。
第十條 認可ヲ経タル建築圖面及仕様書ハ建築調査局ノ巡視員ノ閲覧ニ供スル為メ其建築場ニ備ヘ置クヘシ
認可を受けた建築図面および仕様書ハ建築調査局の巡視員が閲覧できるようにするため、その建築現場に備え置くこと。
第十一條 建築調査局ノ巡視員ハ建築場ヲ巡視シ圖面及仕様書ニ違フモノアルトキハ其工事ヲ停止スルコトアルヘシ
建築調査局の巡視員は建築現場を巡視し、図面および仕様書と違う箇所があるときはその工事を停止させること。
第十二條 特別ノ重量ヲ支持スヘキ柱梁ノ仕様書ニハ其抗力ノ計算ヲ書入ルヘシ
特別な重量を指示すべき柱梁の仕様書には、その耐力の計算を書き入れること。
第十三條 在来ノ煉瓦及石造建物ニ新ニ出入口又ハ窓ヲ設ケントスルトキハ其仕様書ヲ建築調査局ヘ差出シ認可ヲ受クヘシ
既存のレンガおよび石造建物に新たに出入口または窓を設けようとするときは、その仕様書を建築調査局に提出して認可を受けること。
第十四條 住屋ハ使用前建築調査局ヘ届出検査ヲ受クヘシ
住居は使用前に建築調査局へ届け出て検査を受けること。
第十五條 公園、庭園ニ於テ本則ニ依ラサル建築ヲナサントスルトキハ特ニ建築調査局ノ認可ヲ受クヘシ
公園、庭園において本条例に準拠しない建築を行うときは、特に建築調査局の許可を受けること。
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第三章 危険家屋
第十六條 建築調査局ニ於テ建物ニ破損ヲ生シ危険ナルカ又ハ健康ニ害アリテ差置キ難シト認メタルトキハ 豫メ期日ヲ定メ建物主ニ修繕又ハ取崩シヲ命スヘシ
建築調査局は、建物に破損が生じて危険であるか、または健康に害を及ぼすためにそのままにしておくことができないと認めたときは、 あらかじめ期日を定めて建物の所有者に修繕または取り壊しを命じること。
但必要ト認ムルトキハ現住者ニ移轉ヲ命スルコトアルヘシ
ただし、必要であると認めたときは現住者に移転を命じること
第十七條 前條ノ場合ニ於テ建物主命令ニ應シサルトキハ建築調査局之ヲ施行シ其費ハ建物主ヲシテ辨償セシムヘシ
前条の場合において、建物の所有者が命令に応じないときは建築調査局が修繕または取り壊しを行い、 その費用は建物の所有者に弁償させること。
但建物主其費ヲ辨償セサルトキハ其建物又ハ取崩シタル材料ヲ公賣シテ其費ニ充テ 剰餘アルトキハ之ヲ返與シ不足アルトキハ之ヲ追徴スヘシ
ただし、建物の所有者がその費用を弁償しないときは、その建物または取り壊した材料を公売(競売)してその費用にあて、 剰余があるときは返与し、不足があるときは追徴すること。
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第四章 工事監督者
第十八條 建築ヲナサントスルトキハ必ス建築師ヲシテ工事ヲ監督セシムヘシ
建築を行うときは必ず建築師に工事を監督させること。
第十九條 建築師ハ建築専門ノ學士及建築調査局ニ於テ其定ムル程度ニ隨ヒ認可シタル者ニ限ル
建築師は建築専門の学士および建築調査局が定める制度に従って認可した者に限る。
第二十條 建築師ハ其監督セル工事全般ノ責ニ任スヘシ
建築師は監督する工事全般の責任を担うこと。
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第五章 道路及廣場ノ関係
第二十一條 道路、廣場及公園ニ面スヘキ建物ハ東京府ニ於テ定メタル家並線ニ沿フテ建築スヘシ
道路、広場および公園に面する建物は、東京府(現東京都)が定めた家並線(建築線)に沿って建築すること。
第二十二條 道路及廣場ニ面セサル木造屋ニハ道路若クハ廣場ニ通スル幅六尺以上ノ路次ヲ設クヘシ
道路および広場に面していない木造家屋には、道路もしくは広場に通じる幅6尺(約1.8m)の路地を設けること。
第二十三條 家並線ヨリ引下ケテ建築セントスルモノハ建築調査局ヘ願出テ認可ヲ受ケ家並線ニ沿ヒテ縁牆ヲ設クヘシ
家並線から下がった位置に建築する場合には建築調査局に願い出て認可を受け、家並線に沿って縁牆(境界の壁や垣根等)を設けること。
但縁牆ヲ設クルコトヲ得サル理由アルモノハ建築調査局ノ認可ヲ受クヘシ
ただし、縁牆を設けることができない理由がある場合は建築調査局の認可を受けること。
第二十四條 髙サ八尺以内ノ處ニ於テ前壁面ヨリ一尺以上家並線外へ庇ヲ突出セシムルコトヲ得ス
高さが八尺(約2.4m)以下の箇所では、庇を家並線から一尺(約30cm)以上突出させてはならない。
第二十五條 家並線外ニ突出スル出窓及椽側ハ巾四十八尺以上ノ街路ニシテ髙サ十二尺以上ニアラサレハ前壁面ヨリ三尺以上突出セシムルコトヲ得ス
家並線の外に突出する出窓および縁側は、(面している道路が幅が)四十八尺(約15m)以上の街路で (出窓等の位置の)高さが十二尺(約3.6m)以上でないならば、壁面から三尺(約90cm)以上突出させてはならない。
第二十六條 第二十四條第二十五條ニ規程シタル場合ヲ除クノ外家並線外ニ突出シタル搆造ヲナサントスルトキハ建築調査局ノ認可ヲ受クヘシ
第二十四条と第二十五条に規定した場合を除いて家並線の外に突出した構造とするときは建築調査局の認可を受けること。
第二十七條 道路若クハ廣場ニ沿ヒ建築ヲナサントスルトキハ建築調査局ヘ申出家並線及道路髙低線ノ指示ヲ請フヘシ
道路もしくは広場に沿って建築するときは、建築調査局に申し出て家並線および道路高低線についての指示をもらうこと。
第二十八條 都テ建物ノ髙低ハ建築調査局ニ於テ定メタル道路髙低線ノ建造物中央ニ当ル點ヨリ測ルヘシ
全て建物の高さは建築調査局が定めた道路高低線の建造物中央にあたる点から測ること。
第二十九條 家並線ニ沿ヒタル家屋ニ於テ道路髙低線ヨリ髙サ八尺以下ニ設クル出入口及窓ノ戸ハ外ニ向フテ開クヘカラス
家並線に沿った家屋において、道路高低線より高さ八尺(約2.4m)以下に設ける出入口および窓の戸を外開きとしてはならない。
但雨除戸ハ此限ニアラス
ただし、雨戸はこの限りではない。
第三十條 畜舎其他惡臭ヲ放チ或ハ健康ヲ害スル烟気又ハ蒸気ヲ發スルモノハ道路、廣場或ハ他人ノ家屋ニ接シテ窓及出入口ヲ設クヘカラス
畜舎やその他の悪臭を放つ、あるいは健康に害をおよぼす煙または蒸気を発する建物は、 道路、広場あるいは他人の家屋に接して窓および出入口を設けてはならない。
但十五尺以上ノ距離ヲ存スルモノハ此限ニアラス
ただし、十五尺(約4.5m)以上の距離があるものはこの限りではない。
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第六章 特定線路及區域
第三十一條 家屋ヲ建築スルモノハ東京府廳ニ於テ特ニ定メタル線路ヨリ五間以内ニ於テハ石造煉瓦造土蔵造ノ外建築スルヲ許サス
家屋を建築する場合、東京府庁が特に定めた線路から五間(約9m)以内では、石造、煉瓦造、土蔵造以外としてはならない
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第七章 建築地所及家屋
第三十二條 建築地所ニハ其面積ノ五分ノ一以上ノ空地ヲ存スヘシ
敷地にはその面積の1/5以上の空地を設けること。
但道路ニ沿ヒタル空地アルトキハ其面積ハニ尺以上張出シタル建造物ノ下ニ當レル地面ハ建坪ト看做スヘシ
ただし、道路に沿った空地があるときは、ニ尺(約60cm)以上張り出した建物に相当する面積を建築面積とみなすこと。
第三十三條 建築地所ニ置土ヲナストキハ汚穢ノ土ヲ用ユヘカラス
敷地に盛土をするときは、汚穢した土を用いてはならない。
第三十四條 家屋ノ髙サハ軒先ノ上端マテ五十尺以下トシ其面スル道路ノ幅ヲ超ユルコトヲ得ス
家屋の高さは軒先の上端までを五十尺(約15m)以下とし、面する道路の幅を超えてはならない。
但街角ニ在ル家屋ノ髙サハ道路ノ廣キモノニ據ルコトヲ得
ただし、角に建つ家屋の高さは広い方の道路によることができる。
第三十五條 家屋ノ道路若クハ廣場ニ面シタルモノト雖モ三階以上ノ搆造ヲナスヘカラス 其之ニ面セサルモノハ二階以下ニ限ルモノトス
道路もしくは広場に面した家屋は三階以上の構造としてはならない。 面していない家屋は二階以下に限るものとする。
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(この訳ではどっちにしても二階以下になってしまいます。)
第三十六條 屋根裏ニ住戸若クハ住室ヲ設クルトキハ住戸及住室ニ對スル一切ノ條項ヲ守ラシムヘシ
屋根裏に住戸もしくは住室を設けるときは、住戸および住室に対する全ての条項を守ること。
第三十七條 屠所、畜舎ノ階上及之ニ接シテ間隙ナキ界壁アラサル所ニハ住室ヲ設クヘカラス
屠所、畜舎の上階およびこれらに接していて間隙のない壁がない場所には住室を設けてはならない。
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第八章 建物搆造法
第三十八條 建物ノ基礎ヲ築造スルトキハ其地質ニ應シ適當ナル方法ヲ施スヘシ
建物の基礎を築造するときはその地質に応じて適切な方法を施すこと。
第三十九條 家屋ノ間口或ハ奥行三十六尺以上ナルトキハ間仕切壁ヲ設クルカ又ハ梁ヲ用井テ之ニ對スル壁ト締合スヘシ
家屋の間口あるいは奥行きが三十六尺(約11m)以上あるときは、間仕切壁を設けるか、または梁を用いてこれに対する壁と結合すること。
第四十條 前條ニ依リ難キ場合ニ於テハ建築願書中ニ委シク其搆造法ヲ書入レ建築調査局ノ認可ヲ受クヘシ
前条に従うことができない場合には、建築願書中にくわしくその構造法を書入れ、建築調査局の認可を受けること。
第四十一條 家屋内外壁ノ下部ニハ地濕ヲ防ク為メニ適当ノ方法ヲ施スヘシ
家屋内外の壁の下部には湿気を防ぐために適切な対処を施すこと。
第四十二條 住屋ノ床ノ髙サハ地面ヨリ一尺三寸以上ニシテ床下ノ壁ニ風窓ヲ設ケ空気ヲ流通セシムルコトヲ要ス
住屋の床高さは地面から一尺三寸(約40cm)以上として床下の壁には窓を設けて通気させることを要する。
第四十三條 建築用石灰泥ノ砂及石灰ハ其質ニヨリ適当ノ配合ヲ為スヘシ
建築用セメントの砂および石灰は、その質によって適切に配合すること。
第四十四條 屋上ノ物干臺ハ道路若クハ廣場ニ接近セサル所ニシテ其髙サハ棟ヨリ六尺以上出スヘカラス
屋上の物干し台は道路もしくは広場に近くない場所とし、その高さは棟(屋根の頂部)から六尺(約1.8m)以上出してはならない。
第四十五條 屋上ニ設ケル天窓及換氣口ハ不燃質ヲ以テ掩フヘシ
屋上に設ける天窓および換気口は不燃材で覆うこと。
第四十六條 金属煙筒ハ屋外ニ於テ下見板其他ノ燃質物ニ對シ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スヘシ
屋外の金属煙筒は、下見板その他の可燃物に対して一尺五寸(約45cm)以上の距離を置くこと。
第四十七條 局所煖室器及金属烟筒ヲ木造壁ニ添置スルトキハ必ス其壁及天井ヨリ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スヘシ 若シ一尺五寸以内ナルトキハ不燃質物ヲ以テ之ニ面スル部分ノ壁、天井ヲ被フヘシ
局所暖房機器および金属煙筒を木造壁に添えて設置するときは、必ずその壁および天井から一尺五寸(約45cm)以上の距離をとること。 もし一尺五寸以内であるときは、壁、天井のこれに面する部分を不燃材で覆うこと。
第四十八條 屋上ニ突出スル烟筒ハ屋根面ヨリ三尺以上タルヘシ
屋上に突出する煙筒は屋根面から三尺(約90cm)以上の高さとすること。
第四十九條 厨ノ天井又ハ屋根裏ハ髙サ炊竃ノ上端ヨリ四尺以上タルヘシ 若シ四尺以内ノ時ハ之ニ面スル部分ノ天井又ハ屋根裏ヲ不燃質物ヲ以テ被フヘシ
厨房の天井または屋根裏の高さは、竃(かまど)の上端から四尺(約1.2m)以上とすること。 もし四尺以内であるときは、天井または屋根裏のこれに面する部分を不燃材で覆うこと。
第五十條 木造間仕切壁又ハ天井等ヲ通過セシムル金属烟筒ニハ三寸以上ノ不燃質物ヲ用フヘシ
木造の間仕切壁または天井等を通過させる金属煙筒には三寸(約9cm)以上の不燃材を用いること。
第五十一條 煖房、換氣、燈火等ノ為メ鼎釜ヲ据付ルトキハ焚口ノ上端ヨリ天井迄五尺以上ノ距離ヲ存スヘシ 若シ五尺以内ナルトキハ不燃質物ヲ以テ之ニ面スル部分ノ天井ヲ被フヘシ
暖房、換気、照明等のために釜を据付けるときは、焚口の上端から天井まで五尺(約1.5m)以上の距離をとること。 もし五尺以内であるときは、天井の面する部分を不燃材で覆うこと。
第五十二條 數室ニ通スル煖房器ヲ設置セントスルトキハ建築調査局ヘ願出テ認可ヲ受クヘシ
複数の部屋に通じる暖房機器を設定するときは建築調査局に願出て認可を受けること。
第五十三條 家根ハ不燃質物ヲ以テ葺クヘシ
屋根は不燃材で葺くこと。
第五十四條 道路及廣場ニ面セサル家屋ノ軒ノ髙サハ九尺五寸以上ニシテ若シ二層屋以上ヲ設クルトキハ十五尺以上トナスヘシ
道路および広場に面していない家屋の軒高は九尺五寸(約2.9m)以上とし、 もし二階以上を設けるときは十五尺(約4.5m)以上とすること。
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第九章 住室
第五十五條 住室トハ久暫ノ別ナク人ノ棲息スヘキ室ヲ謂フ
住室とは長期短期にかかわらず人が生活する部屋のことをいう。
第五十六條 住室ハ直チニ外氣ニ通スル窓アルコトヲ要ス
住室には直接外気に通じる窓があることを要する。
但數室ノ間ヲ聨接スル室、天井窓アル室及換氣法ヲ設ケアル室ハ此限ニアラス
ただし、複数の部屋の間を連結する部屋、天窓のある部屋および換気設備のある部屋はこの限りではない。
第五十七條 住室ノ最低位置ハ建築調査局ニ於テ定メタル地水最髙面ヨリ髙キコト一尺三寸以上タルヘシ
住室の最低位置は、建築調査局が定めた地水最高面から一尺三寸(約40cm)以上高くすること。
第五十八條 半窖室及窖室ニハ寝室ヲ設クルコトヲ得ス
半地下室および地下室に寝室を設けてはならない。
第五十九條 厠圊ニ隣レル住室ハ其疆界ニ間隙ナキ天井及壁ヲ設クヘシ
トイレに隣接する住室は、その境界に隙間のない天井および壁を設けること。
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第十章 厠圊、坑穴
第六十條 厠圊ハ直ニ外氣ニ通スル窓或ハ空氣拔ヲ設クヘシ
トイレには直に外気に通じる窓あるいは空気抜きを設けること。
第六十一條 運搬スヘキ便器ヲ装置シタル厠圊ノ底面ハ不滲透質ノ材料ヲ以テ造ルヘシ
運搬する便器を設置したトイレの床は浸透しない材料で造ること。
第六十二條 糞尿又ハ腐敗物ヲ容ルヽ坑穴ハ不滲透質ノ材料ヲ以テ搆造スヘシ
糞尿または腐敗物を入れる坑穴は浸透しない材料で造ること。
第六十三條 前項坑口ノ周囲モ亦不滲透質ノ材料ヲ以テ搆造シ坑穴ニ流下スヘキ勾配ヲ付スヘシ 道路、廣場及路次ニ沿ヒタル家屋ノ簷端ニハ雨樋及竪樋ヲ設ケ雨水ヲ下水溝ニ導クヘシ
前条の坑口の周囲もまた浸透しない材料で造り、坑穴に水が流れるように勾配をとること。 道路、広場および路地に沿った家屋の庇の端部には、雨樋および縦樋を設けて雨水を下水溝に導くこと。
第六十四條 庖厨其他ノ廃水ハ不滲透質ノ材料ヲ以テ下水溝ニ導クノ搆造ヲナスヘシ
厨房その他の廃水は、浸透しない材料を用いて下水溝に導く構造とすること。
第六十五條 厠圊、芥溜等ト井トノ間ハ少ナクモ十八尺以上ノ距離ヲ存スヘシ
トイレ、ゴミ置き場等と井戸(生活空間?)との間は少なくとも十八尺(約5.5m)以上の距離を置くこと。
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