当研究室では,熱プラズマを利用した気相合成法の研究を行っており,現在は燃焼炎によるダイヤモンドの合成,大気熱プラズマCVD(以下、大気TPCVD。近年は「液相前駆体溶射」と呼ばれることのほうが多いようです。)による光触媒酸化物皮膜(主にTiO2, ZnO)の合成に取り組んでいます.
  これらの方法では、図1の反応過程を経て薄膜が形成されますので、市販の溶接機(燃焼炎法は酸素/アセチレン溶接機,大気TPCVDはTIG溶接機)を少し改造するだけで,図2,3に示すような成膜装置を作る事ができます.
  このような簡素な装置でも立派なプラズマが発生し,燃焼炎法では直径10〜40μmのダイヤモンド粒子を,大気TPCVDでは9Hの鉛筆引っかき試験にも耐えうる皮膜強度を持つ光触媒TiO2,ZnO薄膜を形成することができます(図4).


図1 燃焼炎法および熱プラズマCVD
における反応素過程の模式図


 図2 燃焼炎ダイヤモンド合成装置   図3 大気熱プラズマCVD装置  

    図4 ダイヤモンド合成および薄膜形成までの流れ

  まだ,成膜中に基材に与える熱的なダメージや合成できる領域の狭さ等,解決すべき問題はいくつか残されていますが,少しずつ実用化に向けた有益なデータが得られております.今後は,ダイヤモンドは工具,TiO2皮膜は色素増感型太陽電池,ZnO薄膜は発光素子への応用に向けた研究を行って行きたいと思っております.
  また,TiO2やZnO薄膜に見られる霜柱のような組織は,ジェットエンジンのタービン翼用熱防護膜(熱しゃへいコーティング(英語でThermal Barrier Coating: TBC)と言います)に適しており,今後はこのTBC用の薄膜としてZrO2にも挑戦したいと思っています.
  最後に,学園祭(わたらせ祭)で当時の4年生が実演した時の写真(図5,H.17年10/8撮影)を載せましたのでご覧下さい.


a)ダイヤモンド合成     b)顕微鏡によるダイヤモンド観察    c)酸化チタン薄膜形成
図5 わたらせ祭での実演の様子