当研究室では、TiO2の他、ZnO(酸化亜鉛)皮膜の形成も行っています。ZnOは、古くから顔料や避雷器などに使われている材料ですが、近年では透明電極や発行素子にも使われる様になりました。我々も、透明電極や発光素子に応用できるZnO皮膜(薄膜)の形成を目指しています。我々が使用する成膜法(大気熱プラズマCVD)では、現在実用化されているスパッタリングやゾル−ゲル法、噴霧熱分解法、MOCVDなどで作られるものほど緻密な膜は形成できませんが、安価な設備で短時間に厚い膜が形成できるという利点があります。
  原料物質にはエタノールで希釈した酢酸亜鉛水溶液を用い、成膜方法はTiO2の場合と同じです。
  しかし、酢酸亜鉛水溶液はTTIBより熱容量が大きいため、TiO2膜形成用ノズルでは気化が十分に行われません。そこでZnO膜形成には、図1のような構造のノズルを用い原料物質の気化が促進するようになっています(図2)。


図1 ZnO膜形成用ノズルの模式図図2 ZnO成膜中の様子

  ZnO成膜の場合も、作動ガスにAr(アルゴン)を使用してきましたが、コスト軽減のため今後はAr/Air(空気)混合ガスを作動ガスに使用する研究にシフトしています。
 キャリアガスにAirを使用し、Ar/Airプラズマジェットを形成した結果は図3に示す通りです。キャリアガスはアーク柱より下流から投入していますが、プラズマ化されるためジェットの色が変化するのがわかります。但し、キャリアガスを10 l/min.以上流すと、流量の増加に伴いプラズマ化されないガス(生ガス)が多くなり、20 l/min.以上プラズマは冷却され原料物質を気化・分解できなくなります。



a) QAir=10 l/min.b) QAir=20 l/min.c)QAir=40 l/min.
図3 Airを添加したArプラズマジェット(Ar/Airプラズマジェット)の概観写真(QAir: Air添加流量)
  図4−6に、QAir=0 l/min.(Arプラズマ), 10 l/min.の条件でZnO皮膜を形成した試料の外観写真およびX線回折結果、破断面観察結果を示します。黄色のZnO皮膜は酸素欠損状態にあり、皮膜中の酸素含有量が増えるにつれ皮膜の色も白色→透明へと変化すると言われています。今回のAir添加条件では透明のZnO皮膜は得られず、X線回折結果からも大きな変化を確認することはできませんでしたが、Arプラズマの場合には全体的に黄褐色の皮膜であったのに対し、QAir=10 l/min.の場合には白色を呈する部分が確認され、Airキャリアガスによるプラズマジェットへの酸素供給効果を示す結果が得られました。
a) QAir=0 l/min.
(Ar plasma)
b) QAir=10 l/min.
図4 ZnO成膜後の試料概観写真



a) QAir=0 l/min.(Ar plasma)b) QAir=10 l/min.
図5 ZnO皮膜の破断面光学顕微鏡写真図6 ZnO皮膜のX線回折結果



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