研究紹介
超伝導バルク磁石の着磁および応用に関する研究
高速移相器のスライディングモード制御による過渡安定度の向上
高速移相器は,発電機の移相角を調節して,電力の流れを制御する装置であり,大容量の半導体素子を用いることにより,高速制御が可能となってきました。
スライディングモード制御(SMC)は,ロバスト制御の一種であり,モデルの不確かさに対して強固なシステムを構築することができます。
本研究は,移相器の制御方法としてSMCを採用することを提案し,電力系統に故障が発生した場合に,速やかに故障を除去し,定常運転に復帰させることを目的としています。

上図に,電力系統を単純化した「一機無限大母線系統」における,高速移相器によるSMCシステムのモデル図を示します。
発電機の相差角と角速度を入力とし,コンピュータで移相器の移相角を計算して,移相器に出力します。

上図に,制御なしと制御ありの場合の,発電機の電気出力および角速度偏差の時間応答を示します。
制御をしない場合は,各応答とも動揺が続きますが,SMC制御を行った場合は,動揺が速やかに抑制され,定常値に復帰していることがわかります。
2軸励磁同期調相機による有効電力制御
一般的な同期調相機は,界磁巻線が一つであるのに対して,2軸励磁同期調相機は,2つの直交した界磁巻線を持つことが特徴です。
各界磁電圧を独立に制御することで,無効電力の調整だけでなく,有効電力を制御することが可能となります。

そこで,調相器自体が有する蓄積エネルギーを活用して,系統に電力動揺が発生した時の過剰電力を調相器に蓄積し,それを電力不足時に系統に補充することにより,系統をより積極的に制御することが可能となります。

上図に2軸同期調相器の制御系を示します。制御入力として,d軸界磁巻線には調相器の端子電圧を,q軸には送電電力をそれぞれ用い,パーソナルコンピュータにより計算して制御信号を出力します。

上図に,2回線送電中の1回線で短絡故障が発生したことを想定した実験を行った時の,発電機および調相機の相差角偏差,および電気出力(送電電力)の時間応答を示します。
左から,制御なし,通常の調相器(1軸器)で制御した場合,2軸調相器で制御した場合です。
制御をしない場合は,動揺が発散し,系統が不安定になってしまいます。
1軸器の制御では,発電機の角速度偏差および送電電力とも発散することはないものの,動揺が大きく残ってしまいます。
2軸調相器の制御では,各動揺が5秒以内に抑制され,系統が安定になっていることがわかります。
これらの結果から,2軸調相器が,過渡動揺抑制の効果が大きいことを確認できました。
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