四角豆

 今年初めて四角豆なる作物を栽培しました。昨年知人から四角豆の種をいただいてまきましたが、芽が出ませんでしたので、今年は「サカタのタネ」から種を取り寄せて挑戦したものです。
 四角豆は熱帯地方原産で沖縄を中心にして栽培されているとのことですから、早まきは駄目で、5月の終わりに種まきをしました。まもなく発芽しましたが、なかなか大きくならず、梅雨明け以降につるを伸ばして背の高さを超え、お盆のころに紫色の可憐な花をつけ、これが実を結び薄緑色の若いさやが食べられるようになりました。
 夏野菜から秋物の葉物野菜に入れ替わる端境期で、丁度良い作物と思えました。収穫が始まると次々と収穫できます。問題は食べ方です。インターネットで検索しましたら、クセのない味で適度に歯ごたえがあるので、サラダ(ゆでて)、酢の物、炒め物、天ぷらなど、幅広く使えるとありました。これならインゲンと同じ食べ方と思われます。
 そこで先ずゆでて刻み、断面が人型のブロックのような形状にしたものを、マヨネーズや醤油で食べてみました。ほんの少しの苦味がマヨネーズと合います。その後、ベーコンやハムと一緒にして炒めたり、天ぷらなどで食べました。歯ごたえがありますので、青物の端境期のときには重宝されそうな野菜と思いました。
 食べて味を確認し、これなら人様に差し上げても大丈夫と思い、10名ほどの知人に差し上げました。もちろん料理法や冷蔵庫での保存には向かないことなどと一緒に。皆さん初めて見る野菜だったようで、先ずは話の種にはなったと思います。クセがなく、歯ごたえがあるので、好評だったようで、来年は自分も栽培してみたいので種が欲しいという人もありました。
 沖縄では、ウリズンと呼ばれ、これは沖縄の方言で四月ごろの新緑の季節の意味で、草木が一斉に萌え出る(芽吹く)ときの美しい薄緑色をしていることから名付けられたそうです。東京のスーパーでも最近見かけるようになったそうですが、群馬の地でも道の駅で、生産者の名前入りで売られていたと後から聞きました。
 この四角豆は、沖縄の夏の野菜不足を補うために、1980年代に旧農林水産省熱帯農業研究センターによって研究され奨励されたそうです。私が四角豆を栽培していることとは何の関係もなく、牛久に住む高校時代にクラブで一緒だった友人から、四角豆の種をもらったので栽培を始めたとのメールをもらいました。彼は前述のセンターに在籍された研究者で、マレーシアやブラジルなど海外の勤務が長く、現役時代には四角豆とは何の関係もなかったそうですが、四角豆の地下部(イモ)も食用になると聞いて、どのようなイモができるかに興味を持って栽培を始めたとのことでした。
 そこで私も四角豆を片付けるときには、地下部を確認しようと考えました。十一月の半ばを過ぎて葉が枯れてきましたので、根を掘り上げました。多くはこぶがいくつも付着した細い根でしたが、太さ1〜2センチのさつま芋状の根もいくつかありました。四角豆はマメ科植物ですから、多くのこぶは土壌バクテリアの根粒菌が植物体と共生して、大気中の窒素を利用してできた根粒のようです。 このさつま芋状のイモを塩ゆでしてみました。時間をかけても硬くて外から箸が通らない状態でしたが、厚い皮は手で削ぐことも可能で、中に白いイモの部分がありました。イモの真ん中にスジが束のようになっていて、このスジを除くと食べることができました。ホクホク感やヌルヌル感のようなものはなく、味も感じないような状態でしたが、イモである確認はできました。更に皮を剥いでゆでてから、人参と一緒にしてきんぴらのように油で炒めて食べましたら、それなりにまずまずでした。
 その後、前述の友人から四角豆のイモが欲しいとの要望がありましたので渡しましたところ、昔ブラジルで良く食べたキャッサバイモのようだったとのメールをもらいました。
 四角豆は、花、若いさや、完熟した豆、さらにイモまでも食用になるとのこと。パプア・ニューギニアでは、このイモ(美味でたんぱく質が豊富とありました)がとくに好まれていて、イモを大きくするために花をつんで実をならせないようにするそうです。
 一昔前、トマトとジャガイモを融合させた「ポマト」が話題となりましたが、トマトもジャガイモも貧弱でしかなかったそうです。地上部にマメを実らせ、地下部にイモができる、双方が食用となる四角豆は理想的な作物です。しかし、我が家では地上部の若いさやを食べることに限定して、来年も栽培したいと考えています。