カンボジアに学校を |
2001年2月7日、私達はカンボジア王国カンポート州チュック郡のトラメン小学校を初めて訪れ、村人総出の大歓迎を受けました。この小学校は、私が所属する「ボランティアこぶの会」が埼玉、群馬の五つの団体と協同で、SVA(社団法人シャンティ国際ボランティア会)を通して寄贈したものです。鉄筋レンガ製瓦貼り5教室の新校舎は、2000年の8月に完成し、10月の新学期から使用されておりました。
今までの屋根だけの、外壁も仕切壁もない今にも壊れそうな校舎に比べれば、新校舎は隣のクラスの授業に影響されることなく、また、生徒たちの机や黒板、教壇なども整って、勉強する環境は大幅に向上したと思われました。ボランティアこぶの会の活動に賛同いただいた多くの協力者の善意が確実に伝わり、結実することになりました。 子供たちとの交流の場では、日本から持って行った折り紙で飛行機を作って飛ばしたり、長ロープで長縄跳びをしました。子供たちはすぐ慣れて、歓声を上げていました。日本でもカンボジアでも子供たちの行動は一緒です。カンボジアの子供たちの方が、生き生きした目をしているようにさえ思えました。 ご存知のようにカンボジアでは、相次ぐ内戦やポル・ポト政権による圧政で、200万人にも及ぶ死者と100万人以上の難民が発生したといわれています。1997年のカンボジア政府の統計では、1974年当時の教師20,000人の75%、初等・中等教育を受けた生徒の67%、高等教育を受けた生徒の80%が殺害されるか、強制労働で命を落とすか、国外に逃れてしまったそうです。同時に、学校や教育施設は閉鎖され、図書館、印刷所は破壊され、それまであったカンボジアの図書は焼かれて消失してしまいました。現在内乱が沈静化し平和を取り戻しつつあるカンボジアですが、依然としてポル・ポト政権による知識人を中心とした大虐殺と、文化の破壊がもたらした物心両面にわたる計り知れない後遺症に苦しんでいます。 ボランティアこぶの会は設立7年目となりますが、トラメン小学校の部分寄贈の後は、会単独でカンボジアに小学校を1校寄贈しようと、募金やチャリティーバザー、クラフト販売などの活動をしてきました。クラフト販売は、アジアの少数民族の作った手工芸品を正月や大祭、縁日などにお店を出して販売するものです。たくさんの方々の協力を得ました。そして昨年の10月に建設資金330万円をSVAへ贈呈し、現在カンポート州・アンコールチェイ郡のダンボック・クポ小学校の古い校舎を新しく建て替え中です。 私はボランティアこぶの会の設立当初からの会員です。カンボジアに小学校を贈る活動以外に、絵本や紙芝居を贈る運動もしてきました。カンボジアへ贈る絵本は日本語のままでは駄目ですから、カンボジアの言語であるクメール語に翻訳しなくてはなりません。既に翻訳できている指定の絵本を大量に集めるのはかなり難しいので、大泉保育福祉専門学校の協力をいただいて、同校の手作り絵本のバックナンバーを入手し、それにクメール語を貼り込んだり、版をお借りしてクメール語を印刷した絵本を製作したりして、既に2,000冊以上をカンボジアへ贈っております。 ボランティア活動の現場では、企画、交渉、組織運営、資料作成、経理などいろいろな能力が必要です。企業に在籍中に培った実務知識やノウハウを、定年後に生かせる絶好の機会でもあります。ボランティアは人のためにするのではなく、自分のためにするものと思っています。新たな出会いがあり、自分の新しい世界が広がります。 定年後私は、大学で教え、卒業研究の学生の面倒を見、コーディネータとして地元企業にコンタクトし、また庭仕事や農作業をするなど、日々忙しくしております。カンボジアの教育支援のボランティアに割く時間も決して少なくありません。早めに予定を立てれば案外何とかなるものです。ボランティアをすることで失うものもあるだろうけど、きっと得ることの方が多いと思います。これからも「人に喜んでいただけることを、自分たちも無理なく楽しくやろう」をモットーにして、ボランティアをやって行きたいと考えています。 三洋電機OBのクリエイティブ・ライフ「定年後」平成16年度版(2004.3) |