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平成28年度卒業研究等

空間デザインコースの学生2名と土木コースの学生1名と一緒に勉強することになった。


高橋 亮太「土地区画整理事業による足利市山前駅北口駅前広場の整備の可能性について」
「区画整理の設計をやりたい」という学生には、かつて先輩たちが挑戦したJR両毛線山前駅の北口の再開発に挑んでもらった。本格的な事業計画書の作成一歩手前(二歩くらいか?)である。丁寧な事前調査の結果、やたらと公衆用道路の多いことがわかった。小規模宅地の多い難しい条件だが、画地評価の係数と減歩率の関係を事前に勉強して、何とか換地設計まで辿り着いた。「課題研究と同じだとしたら違和感ある」という声に対抗して、不動産鑑定評価との比較分析などややマニアックな展開になったが、昨年の卒研の成果も取り入れて歩行者専用道路を中学校前に設置して動線を考える等、工夫したよね。

小此木 俊吾「公営競技場と都市計画との関係性に関する研究」
彼の名誉のために言って措くが、彼は全くギャンブルには興味がない真面目人間である。地元のオートレース場廃止後の土地利用に興味を持ったのである。公営競技場は「都市施設ではない」という所からスタートした研究である。関東地方の競馬場、競輪場、競艇場と訪ねて用途地域を調べて、土地利用転換したプロジェクトも調べた。
サッカー場の都市計画を研究した学生も過去にはいた。あれこれ考え併せると公営競技場やスポーツ施設は土地所有が公共団体だから、公益性のない土地利用をする筈はないという都市計画外の条件を前提にしているのではないだろうかという疑問までは達した。もしそうなら、これは制度論ではないだろう。さて、彼の地元のオートレース場は準工業地域のままではいい訳はないが、商業系が振るわない地方都市の大規模用地の転換は難しい。地方の都市計画の難しさを感じた研究結果であった。

殿畑 克弥「春日部市新方袋地区における土地利用転換の可能性に関する研究」
地元春日部市の都市計画を研究したい、動機はいつも散歩する道路が狭い、区画整理を何故しないのかという点から始まった。建築基準法や都市計画法の例外規定や特例などを丹念に調べた。市街化調整区域の都市計画の研究になった。農業振興地域に指定されていることに気付くのがちょっと遅くて苦労した。区画整理ではない地区計画だと方針転換して、最後は集落地区計画の勉強をして立派に地区計画案を作って卒業した。

 空間デザインコースの研究室として27、28年度に建築系の学生と一緒に勉強したが、わずか3年間の専門教育で建築屋と土木屋になってしまうのに驚いた。発想が全く違う。空間の把握の仕方が違う、社会システムの捉え方が違う。本来、建築が好きで建築系に進み、土木が好きで土木コースに進んだから持って生まれたセンスの違いもあるだろうが、体系的な専門教育の意味を深く考えさせられた卒業研究であった。