大正九年勅令第四百三十八號
市街地建築物法施行令
大正九年九月三十日公布
第一條 | 住居地域内の制限 | 第十六條 | 建築物の敷地の定義 |
第二條 | 商業地域内の制限 | 第十七條 | 損失補償の対象 |
第三條 | 工場等の建築制限 | 第十八條 | 補償の範囲 |
第四條 | 地域による高さ制限 | 第十九條 | 補償請求の期間 |
第五條 | 構造による高さ制限 | 第二十條 | 補償を行う公共団体 |
第六條 | 高さと軒高の定義 | 第二十一條 | 補償を裁定する機関 |
第七條 | 前面道路による高さ制限 | 第二十二條 | 補償審査会の設置 |
第八條 | 複数の道路に接する場合 の高さ制限 | 第二十三條 | 補償審査会の構成 |
第二十四條 | 審査会に対する規定 | ||
第九條 | 建築線と道路境界線が異 なる場合 | 第二十五條 | 建築中・設計済への 措置と補償 |
第十條 | 七条~九条の特例 | 第二十六條 | 建築中・設計済への 許可 |
第十一條 | 高さの最低限度の規定 | ||
第十二條 | 屋上突出物の高さ制限 | 第二十七條 | 物法の適用外建築物 |
第十三條 | 高さ制限の適用外建築物 | 第二十八條 | 建築線規定の適用外 |
第十四條 | 地域による面積の制限 | 第二十九條 | 仮設建築への適用外 |
第十五條 | 建築面積の定義 | 第三十條 | 道路の新設変更 |
第一條 | 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ住居地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス | ||
左の各号の一に該当する建築物は、住居地域内に建築することはできない。 | |||
一 | 常時十五人以上ノ職工ヲ使用スル工場、常時使用スル原動機馬力數ノ合計二ヲ超過スル工場又ハ汽罐ヲ使用スル工場 但シ行政官廳住居ノ安寧ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス | ||
常時十五人以上の職工が働く工場、常時使用する原動機の馬力数の合計が2を超える工場、またはボイラーを使用する工場。 ただし、行政官庁が住居の安寧を害するおそれはないと認めたもの、または公益上やむをえないと認めたものはこの限りではない。 | |||
二 | 五臺以上ノ自動車ヲ常時收容スル車庫 | ||
五台以上の自動車を常時収容する車庫。 | |||
三 | 劇場、活動寫真館、寄席又ハ觀物場 | ||
劇場、映画館、寄席または観物場 | |||
四 | 待合又ハ貸座敷 | ||
待合または貸座敷 | |||
五 | 倉庫業ヲ營ム倉庫 | ||
倉庫業を営む倉庫 | |||
六 | 火葬場 | ||
七 | 屠場 | ||
屠場(家畜を処理して生肉を得る場所) | |||
八 | 塵埃焼却場 | ||
ゴミ焼却場 | |||
九 | 前各號ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官廳住居ノ安寧ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ | ||
前各号に掲げるもの以外で行政官庁が住居の安寧を害するおそれがあると認め、命令でもって指定するもの |
第二條 | 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ商業地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス | ||
建築物で左の各号の一に該当するものは、商業地域内に建築することはできない。 | |||
一 | 常時五十人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力數ノ合計十ヲ超過スル工場 但シ日刊新聞印刷所及行政官廳商業ノ利便ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス | ||
常時五十人以上の職工が働く工場、常時使用する原動機の馬力数の合計が十を超える工場。 ただし、日刊新聞印刷所および行政官庁が商業ノ利便を害するおそれはないと認めたもの、または公益上やむをえないと認めたものはこの限りではない。 | |||
二 | 前條第六號乃至第八號ニ該當スルモノ | ||
前条第六号から第八号に該当するもの(火葬場、屠場、ゴミ焼却場) | |||
三 | 前各號ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官廳商業ノ利便ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ | ||
前各号に掲げるもの以外で行政官庁が商業の利便を害するおそれがあると認め、命令でもって指定するもの |
第三條 | 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ工業地域内ニ非サレハ之ヲ建築スルコトヲ得ス | ||
建築物で左の各号の一に該当するものは、工業地域内でなければ建築することはできない。 | |||
一 | 常時百人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力數ノ合計三十ヲ超過スル工場 但シ第一條第一號但書又ハ前條第一號但書ニ該當スルモノハ此ノ限ニ在ラス | ||
常時百人以上の職工が働く工場、常時使用する原動機の馬力数の合計が三十を超える工場。 ただし、第一条第一号のただし書きまたは前条第一号のただし書きに該当するものはこの限りではない。 | |||
二 | 左ニ掲クル事業ヲ營ム工場但シ行政官廳衛生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス | ||
左に掲げる事業を営む工場。ただし、行政官庁が衛生上有害または保安上危険のおそれがないと認めたものはこの限りではない。 | |||
イ | 銃砲火藥類取締法ノ火藥類ノ製造 | ||
ロ | 鹽素酸鹽類、過鹽素酸鹽類、「ピクリン」酸、「ピクリン」酸鹽類、黄燐、赤燐、硫化燐、「カリウム」、 「ナトリウム」、「マグネシウム」、過酸化水素、過酸化「カリウム」、過酸化「ナトリウム」、過酸化「バリウム」、 硫化炭素、「エーテル」、「コロヂウム」、「アルコホール」、木精、「アセトン」、「ベンゾール」、「キシロール」、 「トルオール」、「テレビン」油、硝化繊維素、「セルロイド」、石油類其ノ他之ニ類スル引火性又ハ發火性物品ノ製造 | ||
・・・等に類する引火性または発火性のある物品の製造 | |||
ハ | 硫黄、沃度、「ブローム」、四鹽化炭素、鹽化硫黄、鹽酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素、醋酸、無水醋酸、石炭酸、 安息香酸、苛性加里、苛性曹達、「アムモニア」水、炭酸加里、炭酸曹達、「クロール」石炭、次硝酸蒼鉛、 「チアン」化合物、砒素化合物、「バリウム」化合物、水銀化合物、鉛化合物、銅化合物、亜硫酸鹽類、「フォルマリン」、 「クロロホルム」、「イヒチオール」、「ズルフォナール」、「グリセリン」、「アンチフェブリン」、「アスピリン」、 「クレオソート」、「グアヤコール」等其ノ製造ニ際シ有臭又ハ有害ノ瓦斯又ハ廢液ヲ生スル物品ノ製造 | ||
・・・製造の際に臭い、有害なガス、廃液を生ずる物品の製造 | |||
ニ | 水銀ヲ用ヰル計器ノ製造 | ||
ホ | 燐寸(マッチ)ノ製造 | ||
ヘ | 金屬ノ熔融又ハ精煉 | ||
ト | 乾燥油又ハ溶劑ヲ用井ル擬革紙布又ハ防水紙布ノ製造 | ||
チ | 肥料ノ製造 | ||
リ | 動物質原料ノ化製 | ||
ヌ | 製革又ハ毛皮ノ精製 | ||
ル | 骨、角又ハ貝殻ノ乾燥研磨 | ||
ヲ | 製油又ハ製蝋 | ||
ワ | 染料、顔料又ハ塗料ノ製造 | ||
カ | 煉瓦又ハ坩堝(るつぼ)ノ製造 | ||
ヨ | 「アスファルト」ノ製造 | ||
タ | 「セメント」、石膏、石灰、煆製石灰、炭化石灰又ハ石灰窒素ノ製造 | ||
レ | 古綿又ハ襤褸(ぼろ)類ノ精製 | ||
ソ | 砿石類、黒鉛、硝子、煉瓦、陶磁器等ノ粉碎 | ||
ツ | 石炭瓦斯(ガス)又ハ壓縮瓦斯(あっしゅくガス)ノ製造 | ||
ネ | 「コークス」ノ製造 | ||
ナ | 石炭「タール」、木「タール」、石油蒸餾産物又ハ其ノ残渣ヲ原料トスル製造 | ||
ラ | 石鹸ノ製造 | ||
ム | 製紙 | ||
ウ | 溶劑ヲ用井ル護謨(ゴム)製品ノ製造 | ||
ヰ | 鋼釘又ハ鋼球ノ製造 | ||
ノ | 汽罐(ボイラー)ノ製造 | ||
オ | 金屬ノ壓延又ハ伸線 | ||
ク | 炭素製品ノ製造 | ||
三 | 前號ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官廳衛生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル事業ヲ營ム工場 | ||
前号に掲げるもの以外で行政官庁が衛生上有害または保安上危険のおそれがあると認め、命令でもって指定する事業を営む工場 | |||
四 | 第二號イ、ロ、ホ、リ及レノ物品ノ貯藏又ハ處理ニ供スルモノ 但シ行政官廳衛生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス | ||
第二号イ、ロ、ホ、リおよびレの物品の貯蔵または処理に使用されるもの。 ただし、行政官庁が衛生上有害または保安上危険のおそれがないと認めたものはこの限りではない。 | |||
五 | 前號ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官廳衛生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル物品ノ貯藏又ハ處理ニ供スルモノ | ||
前号に掲げるもの以外で行政官庁が衛生上有害または保安上危険のおそれがあると認め、命令でもって指定する物品の貯蔵または処理に使用されるもの |
第四條 | 建築物ノ髙ハ住居地域内ニ於テハ六十五尺ヲ、住居地域外ニ於テハ百尺ヲ超過スルコトヲ得ス 但シ建築物の周圍ニ廣濶ナル公園、廣場、道路其ノ他ノ空地アル場合ニ於テ行政官廳交通上、衛生上及保安上支障ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス | ||
建築物の高さは、住居地域内では六十五尺(約二十メートル)を、住居地域外では百尺(約三十メートル)を超えてはならない。 ただし、建築物の周囲に広闊な公園、広場、道路その他の空地がある場合で、行政官庁が交通上、衛生上および保安上支障がないと認めたときは此の限りではない。 |
第五條 | 煉瓦造建築物及石造建築物ハ髙六十五尺軒髙五十尺ヲ、木造建築物ハ髙五十尺軒髙三十八尺階數三ヲ、木骨煉瓦造建築物及木骨石造建築物ハ髙三十六尺軒髙二十六尺ヲ超過スルコトヲ得ス | ||
レンガ造建築物および石造建築物では高さは六十五尺(約二十メートル)軒高は五十尺(約十五メートル)を、 木造建築物では高さは五十尺(約十五メートル)軒高は三十八尺(約十一・五メートル)階数は三階を、 木骨レンガ造建築物および木骨石造建築物では高さは三十六尺(約十一メートル)軒高は二十六尺(約八メートル)を超えてはならない。 | |||
前項ノ石造ニハ人造石造及「コンクリート」造ヲ、木造ニハ土藏造ヲ包含ス | |||
前項の石造には人工石造(ブロック造)およびコンクリート造を、木造には土蔵造りを含める。 | |||
第一項ノ木骨煉瓦造建築物トハ厚三寸以上ノ煉瓦積ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂ヒ 木骨石造建築物トハ厚三寸以上ノ石、人造石又ハ「コンクリート」ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂フ | |||
第一項の木骨レンガ造建築物とは、厚さ三寸(約九センチメートル)以上の煉瓦積みで木骨を被覆または充填して外壁を構成するものをいい、 木骨石造建築物とは厚さ三寸(約九センチメートル)以上の石、人工石(ブロック)またはコンクリートで木骨を被覆または充填して外壁を構成するものをいう。 | |||
一建築物ニシテ外壁二種以上ノ構造ヨリ成ルモノニ付テハ第一項ノ規定ノ適用ニ關シ制限ノ最嚴ナルモノニ依ル | |||
一つの建築物で外壁が二種類以上の構造からなるものについては、第一項の規定のうち制限が最も厳しくなるものを適用する。 | |||
第一項ノ階數ニハ屋階及地階ヲ包含セス | |||
第一項の階数には屋根裏部屋および地階(地下)を含めない。 |
第六條 | 前二條ニ規定スル建築物ノ髙トハ地盤面ヨリ建築物ノ最髙部迄ノ髙ヲ謂フ | ||
前二条に規定する建築物の高さとは地盤面から建築物ノ最高部までの高さをいう。 | |||
前條第一項ノ軒髙トハ地盤面ヨリ建築物ノ外壁上端迄ノ髙、外壁上端ニ扶欄扶壁又ハ軒蛇腹アルトキハ其ノ最髙部迄ノ髙、出軒ノ場合ニハ軒桁上端迄ノ髙ヲ謂フ 但シ切妻ノ部分ハ軒髙ニ之ヲ算入セス | |||
前条第一項の軒高とは地盤面から建築物の外壁上端までの高さを、 外壁上端に手すりやパラペットまたは軒蛇腹(壁上端の帯状装飾)があるときはそれらの最高部までの高さを、 軒が外側に出ている場合には軒桁上端までの高さをいう。 ただし、切妻の部分は軒高には算入しない。 | |||
前二項ノ地盤面ニ髙低アルトキハ行政官廳其ノ地盤面ヲ認定ス | |||
前二項の地盤面に高低差があるときは、行政官庁がその地盤面を認定する。 |
第七條 | 建築物各部分ノ髙ハ其ノ部分ヨリ建築物ノ敷地ノ前面道路ノ對側境界線迄ノ水平距離ノ一倍四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス 且其ノ前面道路幅員ノ一倍四分ノ一ニ二十五尺ヲ加ヘタルモノヲ限度トス 但シ住居地域外ニ在ル建築物ニ付テハ一倍四分ノ一ヲ一倍二分ノ一トス | ||
建築物の各部分の高さは、その部分から前面道路の反対側境界線までの水平距離の一・二五倍を超えてはならない。 かつ、その前面道路の幅員の一・二五倍に二十五尺(約七・六メートル)を加えたものを限度とする。 ただし、住居地域外の建築物については一・五倍とする。 | |||
前項ノ髙トハ前面道路ノ中央ヨリノ髙ヲ謂フ | |||
前項の高さとは、前面道路中央(高さ)からの高さを謂う![]() |
第八條 | 建築物ノ敷地カ幅員同シカラサル二以上ノ道路ニ接スル場合ニ於テ一ノ道路ノ境界線迄ノ水平距離カ其ノ道路幅員ノ一倍二分ノ一以内ニシテ 且八十尺以内ノ區域ノ内ニ在ル建築物各部分ノ髙ニ付テハ前條ノ規定ノ適用ニ關シ其ノ道路ヲ前面道路ト看做ス | ||
建築物の敷地が幅員の異なる二つ以上の道路に接している場合、一つの道路の境界線までの水平距離がその道路の幅員の一・五倍以内で かつ八十尺(約二十四メートル)以内の区域内にある部分の高さについて、その道路を前面道路とみなして前条の規定を適用する。 | |||
前項ノ規定ニ依ル前面道路二以上アル場合ニ於テ其ノ幅員同シカラサルトキハ幅員小ナル前面道路ハ幅員最大ナル前面道路ト同一ノ幅員ヲ有スルモノト看做ス | |||
前項の規定による前面道路が二つ以上ある場合でその幅員が異なるときは、幅員が小さい前面道路について幅員が最大である前面道路と同じ幅員であるとみなす。 (第一項で規定されている制限区域が重なる場合は大きい方の幅員で制限する) |
|||
第一項ノ場合ニ於テ同項ニ規定スル區域ノ外ニ在ル建築物各部分ニ付テハ幅員最大ナル道路ヲ前面道路ト看做ス | |||
第一項の場合で、同項に規定する区域外にある部分については幅員が最大である道路を前面道路とみなす。![]() |
第九條 | 道路境界線カ建築線ト一致セサル場合ニ於テハ道路境界線又ハ道路幅員ニ關スル前二條ノ規定ノ適用ニ關シ建築線ヲ其ノ道路境界線ト看做ス | ||
道路境界線が建築線と一致しない場合は、建築線を境界線とみなして前二条の道路境界線または道路の幅員に関する規定を適用する。 |
第十條 | 建築物ノ敷地左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ前三條ノ規定ニ拘ラス行政官廳別段ノ定ヲ爲スコトヲ得 | ||
建築物の敷地が左の各号の一に該当するときは、前三条の規定に拘わらず行政官庁は別途(高さ制限を)定めることができる。 | |||
一 | 公園、廣場、河、海ノ類ニ接スルトキ | ||
公園、広場、河、海等に接するとき | |||
二 | 前面道路ノ對側ニ公園、廣場、河、海ノ類アルトキ | ||
前面道路の反対側に公園、広場、河、海等があるとき | |||
三 | 其ノ地盤面ト前面道路ノ路面トノ髙低ノ差著シキトキ | ||
地盤面と前面道路の路面との高低差が著しいとき | |||
四 | 髙低ノ差著シキ二以上ノ道路ニ接スルトキ | ||
高低差が著しい二つ以上の道路に接するとき | |||
五 | 道路ノ終端ニ位スルトキ | ||
道路の終端に位置するとき |
第十一條 | 行政官廳ハ命令ヲ以ヲ(テの誤り?)特ニ道路ヲ指定シ之ニ面スル建築物ノ髙ノ最低限度ヲ定ムルコトヲ得 | ||
行政官庁は命令でもって、特に指定した道路に面する建築物の高さの最低限度を定めることができる。 |
第十二條 | 煙突、棟飾、避雷針、旗竿、風見竿等建築物の屋上ニ突出スルモノノ髙ハ建築物ノ髙ニ之ヲ算入セス | ||
煙突、棟飾、避雷針、旗竿、風見竿等の屋上に突出するものの高さは建築物の高さには算入しない。 | |||
装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上突出部ノ髙ハ行政官廳命令ノ定ムル所ニ依リ建築物ノ髙ニ之ヲ算入セサルコトヲ得 | |||
装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等の屋上突出部の高さは、行政官庁の命令によって建築物の高さに算入しないことができる。 |
第十三條 | 本令中髙ニ關スル規定ハ煙突、物見塔、扛重機、水槽、氣槽、無線電信用電柱ノ類 及工業用建築物ニシテ行政官廳其ノ用途ニ依リ已ムヲ得スト認メ許可シタルモノニ付之ヲ適用セス | ||
本令中の高さに関する規定は、煙突、物見塔、扛重機(ジャッキ)、水槽、気槽、無線電信用電柱ノ類 および工業用建築物で行政官庁がその用途からやむをえないと認めて許可したものについては適用しない。 | |||
本令中髙ニ關スル規定ハ社寺建築物ニシテ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルモノニ付之ヲ適用セス | |||
本令中の高さに関する規定は、社寺建築物で行政官庁の許可を受けたものについては適用しない。 |
第十四條 | 建築物ノ建築面積ハ建築物ノ敷地ノ面積ニ對シ住居地域内ニ於テハ十分ノ六、商業地域内ニ於テハ十分ノ八、 住居地域及商業地域外ニ於テハ十分ノ七ヲ超過スルコトヲ得ス 但シ商業地域内ニ於テ行政官廳特ニ指定シタル角地其ノ他ノ地區ニ於ケル建築物ノ第一階及地階ニ付テハ此ノ限ニ在ラス | ||
建築物の建築面積は敷地面積に対して、住居地域内であれば十分の六(60%)、商業地域内であれば十分の八(80%)、 住居地域および商業地域外であれば十分の七(70%)を超えてはならない。 ただし、商業地域内で行政官庁が特に指定した角地その他の地区の一階および地階についてはこの限りではない。 | |||
主トシテ住居ノ用ニ供スル建築物ハ住居地域外ニ在ルモノト雖前項ノ規定ノ適用ニ關シ住居地域内ニ在ルモノト看做ス | |||
おもに住居として用いる建築物は、住居地域外であっても住居地域内にあるものとみなして前項の規定を適用する。 |
第十五條 | 前條第一項ノ建築面積トハ建築物ノ水平斷面ニ於ケル外壁ノ又ハ之ニ代ルヘキ柱ノ中心線内面積中最大ナルモノヲ謂フ 但シ地階ニシテ其ノ外壁ノ髙地盤面上六尺以下ノモノノ部分ノ面積ハ之ヲ建築面積ト看做サス | ||
前条第一項の建築面積とは、建築物の水平断面での外壁またはこれに代わる柱の中心線内面積の中で最大となるものをいう。 ただし、地階であって外壁の高さが地盤面上六尺(約一・八メートル)以下の部分の面積は建築面積とはみなさない。 | |||
軒、庇、桔出縁ノ類カ前項ノ中心線ヨリ突出スルコト三尺ヲ超ユル場合ニ於テハ其ノ外端ヨリ三尺ヲ後退スル線ヲ以テ前項ノ中心線ト看做ス | |||
軒、庇、桔出縁に類するもので前項の中心線から三尺(約九十センチメートル)を超えて突出する場合は、その外端から(内側に)三尺後退した線を中心線とみなす。 | |||
前條第一項ノ建築物ノ敷地ノ面積トハ建築物ノ敷地ノ水平斷面ノ面積中最大ナルモノヲ謂フ | |||
前条第一項の建築物の敷地の面積とは、敷地の水平断面の面積中最大となるものをいう。 |
第十六條 | 第七條、第八條、第十條、第十四條、前條及第十七條ノ建築物ノ敷地トハ一構ノ建築物ニ屬スル一團ノ土地ヲ謂フ | ||
第七条、第八条、第十条、第十四条、前条および第十七条の建築物の敷地とは一つの構えをなす建築物に属する一団の土地をいう。 |
第十七條 | 市街地建築物法第十八條第二項ノ規定ニ依リ損失ヲ補償スヘキ場合ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ限ル | ||
市街地建築物法第十八条第二項の規定によって損失を補償する場合は、左の各号の一に該当する場合に限る。 | |||
一 | 地域ノ又ハ工業地域内特別地區ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物ノ使用禁止又ハ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合 | ||
地域または工業地域内特別地区の指定または変更に基づいて建築物の使用禁止または主要構造部の除却を命じた場合。 | |||
二 | 美観地區ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合 | ||
美観地区の指定または変更に基づいて主要構造部の除却を命じた場合。 | |||
三 | 建築線ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物ノ主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合 | ||
建築線の指定または変更に基づいて主要構造部の除却を命じた場合。 | |||
四 | 建築線ニ面スル建築物ノ壁面ノ位置ノ指定ニ基キ建築物主要構造部ノ變更又ハ除却ヲ命シタル場合 | ||
建築線に面する壁面の指定に基づいて主要構造部の変更または除却を命じた場合。 | |||
五 | 建築物ノ髙又ハ建築物ノ敷地内ニ存セシムヘキ空地ニ關スル規定ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合 | ||
建築物の高さまたは敷地内に設ける空地に関する規定に基づいて主要構造部の除却を命じた場合。 |
第十八條 | 市街地建築物法第十八條第二項ノ規定ニ依リ補償スヘキ損失ハ通常生スヘキ損失ニ限ル | ||
市街地建築物法第十八条第二項の規定によって補償する損失は、通常に生じる損失に限る。 |
第十九條 | 前二條ノ規定ニ依ル損失補償ノ請求ハ市街地建築物法第十八條第一項ノ措置ヲ命セラレタル者之ヲ命セラレタル日ヨリ起算シ三月内ニ之ヲ爲スコトヲ得 | ||
前二条の規定による損失補償の請求は市街地建築物法第十八条第一項の措置を命じられた日から三ヶ月以内に行うことができる。 |
第二十條 | 市街地建築物法第十八條第二項ノ公共團體トハ同法第二十三條ノ規定ニ依ル同法適用區域ノ屬スル市區町村トス | ||
市街地建築物法第十八条第二項の公共団体とは、 同法第二十三条の規定による同法適用区域の属する市区町村とする。 |
第二十一條 | 補償義務ノ有無及補償ノ金額ハ補償審査會之ヲ裁定ス | ||
補償義務の有無および補償の金額は、補償審査会が裁定する。 |
第二十二條 | 補償審査會ハ第二十條ニ規定スル市街地建築物法第十八條第二項ノ公共團體毎ニ之ヲ置ク | ||
補償審査会は第二十条に規定する市街地建築物法第十八条第二項の公共団体ごとに設置する。 | |||
補償審査會ハ會長一人及委員十二人ヲ以テ之ヲ組織ス | |||
補償審査会は会長一人、委員十二人で組織される。 |
第二十三條 | 會長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ | ||
会長は地方長官とする。 | |||
委員は左ニ掲クル者ヲ以テ之ニ充ツ | |||
委員は左に掲げる者とする。 | |||
一 | 關係各廳高等官 四人 | ||
関係各庁高等官 四人 | |||
二 | 前條第一項ノ公共團體ノ吏員 二人 | ||
前条第一項の公共団体の職員 二人 | |||
三 | 前號ノ公共團體ノ議會ノ議員 四人 | ||
前号の公共団体の議会の議員 四人 | |||
四 | 學識經驗アル者 二人 | ||
学識経験がある者 二人 | |||
前項第一號、第二號及第四號ノ委員ハ主務大臣之ヲ命シ第三號ノ委員ハ其ノ議會ニ於テ之ヲ選擧ス | |||
前項第一号、第二号および第四号の委員は主務大臣(内務大臣)が任命し、第三号の委員はその議会で選挙する。 |
第二十四條 | 補償審査會ニ關シテハ土地收用法第二十七條乃至第三十一條、第三十七條、第三十九條、第四十條第一項第二項、 第四十二條乃至第四十五條、第六十九條、第七十二條及第八十三條ノ規定ヲ準用ス | ||
補償審査会に関しては、土地収用法の第二十七条から第三十一条、第三十七条、第三十九条、第四十条第一項第二項、 第四十二条から第四十五条、第六十九条、第七十二条および第八十三条の規定を準用する。 | |||
第二十二條第一項ノ公共團體ノ二以上ニ亘ル建築物ニ關シテハ關係補償審査會合同ニシテ會議ヲ開クヘシ | |||
二つ以上の公共団体にわたる建築物に関しては関係補償審査会が合同で会議を開くこと。 |
第二十五條 | 市街地建築物法第十八條ノ規定ハ建築工事中ノ建築物及建築工事ニ着手セサルモ設計アル建築物ニ之ヲ準用ス | ||
市街地建築物法第十八条(行政措置と補償)の規定は、建築工事中または着工していなくても設計済みである建築物にも準用する。 |
第二十六條 | 行政官廳ハ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ着手セサルモ設計アル建築物ニシテ其ノ建築竣成ノ後ニ於テ市街地建築物法第十八條第一項ノ規定ニ依ル措置ヲ 命スル必要ナシト認ムルモノニ付テハ其ノ建築ヲ許可スルコトヲ得 | ||
行政官庁は、建築工事中または着工していなくても設計済みである建築物で、竣成後に市街地建築物法第十八条第一項の規定による措置を 命じる必要がないと認めたものについては建築を許可することができる。 |
第二十七條 | 市街地建築物法ハ古社寺保存法又ハ史蹟名勝天然紀念物保存法ノ適用又ハ準用ヲ受クル建築物ニ付之ヲ適用セス | ||
市街地建築物法は、古社寺保存法または史蹟名勝天然紀念物保存法の適用または準用を受ける建築物については適用しない。 |
第二十八條 | 鳥居、形像、紀念門、紀念塔其ノ他建築物ニシテ道路ヲ占用シテ施設スルモノニ對シテハ市街地建築物法第八條、第九條及第十一條ノ規定ヲ適用セス | ||
鳥居、形像、記念門、記念塔その他の道路を占用して施設するものに対しては、 市街地建築物法第八条(建築線と敷地)、第九条(建築線からの突出)および第十一条(高さ、空地)の規定を適用しない。 |
第二十九條 | 博覽會建築物、觀覽場、飾門、飾塔、足代及棧橋ノ類ニシテ假設的ノモノニ對シテハ市街地建築物法第二條乃至第六條、第九條及第十一條ノ規定ヲ適用セサルコトヲ得 | ||
博覧会建築物、観覧場、飾門、飾塔、足場および桟橋の類で仮設的なものに対しては、市街地建築物法第二条から第六条、 第九条および第十一条の規定を適用しなくてもよい。 |
第三十條 | 市街地建築物法第二十六條第一項ノ道路ノ新設又ハ變更ノ計畫アル場合ニ於テ行政官廳其ノ計畫ヲ告示シタルトキハ其ノ計畫ノ道路ハ之ヲ道路ト看做ス | ||
市街地建築物法第二十六条第一項の道路の新設または変更の計画がある場合、行政官庁がその計画を告示したときはその計画道路を道路とみなす。 | |||
附則 | |||
本令ハ市街地建築物法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス | |||
本令は市街地建築物法の施行日より施行する。 |