スマートコンクリートに関する研究
―自己診断機能をもつコンクリートの開発―
足利工業大学 仁田佳宏
ピエゾケーブルを構造体に埋め込むことにより、自己診断的にひび割れの発生が検知できるようなコンクリート構造物の開発を目的とする。ピエゾケーブルは、芯線と編み線間の絶縁体としてピエゾフィルムを挟み込んだ同軸ケーブル状のものである。ピエゾには、電圧を加えることにより力やひずみを発生する逆圧電効果と応力やひずみが加わることにより電圧を発生する圧電効果があり、逆圧電効果はアクチュエータとして、圧電効果はセンサとして機能する。ピエゾケーブルは、この圧電効果により、ケーブルに衝撃、引張・圧縮やひずみが生じると、力やひずみに比例した電圧を発生するため、ひび割れ発生時に電圧が生じることとなる。この電圧の発生をマイクロコンピュータにより検知することで、簡易なひび割れ発生検知システムが構築できると考えられる。Figure 1にひび割れ検知システムの模式図を示す。
これまで、Figure 2に示すような4×4×16cmの試験体を対象として、Figure 3に示すような曲げ破壊実験を行い、ピエゾケーブルのひび割れ発生検知性能を確認している。曲げ破壊実験では、ピエゾケーブルの有効性を確認する目的で、試験体の裏面にひずみゲージを添付している。Figure 4にひずみゲージの計測電圧を、Figure 5にピエゾケーブルの計測電圧を示す。これらの図より、ピエゾケーブルにより、ひび割れの発生が検知できことを確認している。また、ピエゾケーブル、ひずみゲージともに、急激な除荷による加力荷重の変化についてもモニタリングできることを確認している。
現在、今本啓一助教授(足利工業大学)と共同で、ピエゾケーブルを用いたひび割れ発生検知システムに関する基礎的な研究を行っている。
ひび割れ発生
Figure 1 自己診断機能の模式図
Figure
2 ピエゾケーブル埋め込み試験体
Figure 3 曲げ破壊実験
Figure 4 ひずみゲージによる計測
Figure 5 ピエゾケーブルによる計測